はじまり
1人の坊主頭の男子が友達と廊下から顔をのぞかせている。
「藍沢さんっ!」
1人の女子の名前を呼んだが気付いてないようだ。
「・・・・。」
「ちょっとだけいいっすかぁ?!」
さっきよりも弾んだ声で彼女に呼び掛けた。
「・・・うちですか?」
やっと呼び掛けに大きな瞳をぱちくりしながら返事をした。
「廊下来てくださいっ!」
そう告げると男子生徒は廊下に顔を引っ込めた。
―ガラガラ―
彼女は戸惑いながらドアを開けて廊下に出た。
すると男子生徒が下を向きながらメモ書きのようなものを彼女に差し出した。
「お願いしますっ!」
彼女は訳も分からず受け取った。
用が済むと男子生徒は連れの友達と足早に立ち去ってしまった。
「・・・?」
手渡されたメモ書きに目を向けてみるとアドレスらしきものと名前があった。
―倉田大輔―
mezase-koushien-dk@..
「・・・あっ」
彼女はメモに書かれている単純なアドレスと坊主頭を照らし合わせ納得していた。
―ガラガラ―
彼女は落ち着いた様子で教室に戻り、新しく出来た友達と会話を始めた。
「梨華ちゃん、あの人達だあれ?」
藍沢梨華の後ろの席の優香が尋ねてきた。
「うちも分からない~びっくりしたよっ!」
興奮した様子で梨華が答えた。
「知らない人だったんだ~!何か怖かったぁー!何部だろうね?」
梨華はちょっとだけ得意気に
「あれは野球部じゃないかなぁ~?」
と優香に伝えた。
「頭とか坊主だしねっ!そうかもしれないね~♪」
ハイテンションな優香に対して梨華はあっさりと返事をする。
「うんっ」
「そういえばウチの野球部って甲子園とか行ってるんでしょ~?!」
「知ってる~!すごいんだよねぇ。」
甲子園と聞いて
―倉田大輔―の名を思い出していた。
「アド教えてよー♪」
沈黙を破るように優香が言ってきた。
「いいよ~」
梨華が答えて
優香がケータイを鞄から取りだそうとした瞬間、担任の太田が教室に入ってきた。
「後でにするねっ」
優香は焦りながら急いでケータイを鞄にしまった。
校則によってケータイは持ち込み禁止。
見付かれば没収という厳しさから生徒達は鞄の奥にしまいこんでいる。
担任の太田の長い話のあと、号令がかかり学校が終わった。
「お疲れ♪本当あの担任のオッサン長いよねー!」
優香が後ろから明るい声で話しかけてきた。
「本当長すぎ~1年間とか耐えられないよねっ」
飽きっぽく落ち着かない性格の持ち主の梨華は少し疲れた顔になっていた。
「平気~?優香も疲れちゃった・・そうそうっ!メアド交換しよう♪」
優香はケータイを取りだして赤外線で梨華とアドレスを交換した。
30分くらい話をして
2人は、お互いの家路に着いた。
梨華は、帰宅してソファーの上で昼間渡されたアドレスの紙を眺めていた。
15分程して悩んだ末にメールを打ち込んだ。
落ち着かない様子でフラフラと浴室へ向かった。
梨華は濡れた髪を乾かしながらケータイを開いた。
すると新着メールが1件届いていた。
「優香だよ

登録よろしくねッ
」梨華は倉田大輔からのメールを期待していたのか、ハーッと溜め息をついて優香に返信した。
優香とのメールのやりとりは深夜まで及び、
お互いのことを色々と語ったりした。
そして知らないうちに、眠りについていた。
