8月8日
高速道路の左端を走っている積りでした。
突然路肩に乗り上げ、サイドミラーがガードレールに衝突しました。
そのミラーが再度ウィンドウに衝突し、一瞬で粉々になりました。
あたかも、雪のような粉々の白いガラスの破片が
左側から、私が居る運転席に降って来ました。
同時にハンドルが左側に固定され「ガシャーン!」
時速70キロメール位で走っていたと思われますが、
一瞬で停止しました。
何が起こったのか???
なぜ止まったんだ???
辺りは真っ白。中には光っているものもあります。
体は締め付けられるような感じです。
何をしたら良いのか?
今どこにいるのか?
エンジンは止まっていません。
私は操縦席から離れませんでした。
2~3分したころでしょうか?
赤い車が私の車の前に停止して、
運転席から私に近づいてきました。
「大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」
私はシートベルトを外し、右側のドアから外にでて、
自分の車と相手の車の間に立ちました。
左腕と左足には、一直線上に並んだガラスのかけらと、
血が滴り流れています。
「血が出ていますよ。痛いですか?痛いですよね?」
とおっしゃいます。なんて親切な人でしょう。
私は、「痛くはありません。」と精いっぱいのやせ我慢?
ではなく、本当に痛くはありませんでした。
「気が張っているからですよ。後からきますよ。
私にも経験があります。」と言ってくださいました。
そして、直ちに110番を掛けてくださり、
発煙筒を焚いて後方の車を誘導してくださいました。
私は何をしていたのだろう?
ただ突っ立っているだけでした。
助手席から彼の彼女とおぼしき人が出てきました。
「血がでていますよ。痛くはありませんか?」
私は「痛くはありません。」と答えただけです。
普段の私なら「貴方は男を見る目があるよ。」と言ってのけたでしょうが、
その当時はそんな心の余裕もありませんでした。
2人で、手足に着いたガラスの破片を取り去りながら、
「血が流れていますよ。絆創膏を貼りましょうか。」とおっしゃいます。
私は「このまま乾かしてください。血はすぐに止まります。」
と答えました。本当に何もしない方が、早く治るだろうと思いました。
彼が戻ってきて「救急車を呼びましょうか?」と言います。
私は「いいえ、大丈夫です。それよりもレッカー車です。」
と答えました。
彼は「それは、警察が来てから考えましょう。」と言うので、
後続車を誘導しながら、パトカーが来るのを待ちました。
15分位で、パトカー2台と警察官3人が到着しました。
赤い車の人には「お名前と連絡先を教えてください。」
と何度もお願いしたのですが、
彼は「たまたま通りかかっただけですから。」と固辞され、
最後まで教えて頂けませんでした。
私が逆の立場だったとしたら、黙って見過ごすだろうな?
知り合いだったら手を貸すかもしれない。
もし知り合いだったとしても、嫌な奴だったら「他人の振り」
をするかもしれません。
ここから事故調書の取り調べです。
「免許書と車検証を出して。」と言われ1人の人に差し出します。
2人目の人は私に質問をします。
「同乗者は居ないの?先の人は知り合いではないのか?
事故の相手は居ませんか?救急車を呼びますか?」
順番がどうだったか覚えていません。
3人目の人は、後方車の誘導を行っています。
通り一遍の質疑応答は終わりました。
警察も意外だったのだろうな?
知り合いでもないのにここまでしてくれるなんて。
「連絡先は聞いて居ないの?」
「聞きましたよ。何度も聞きました。教えてくれなかったんです。」
自分も聞きそびれたくせに、なぜ私だけを責めるのか???
警察は次に道路管理者を呼びます。
黄色い車で後部に掃除用具を載せているアレです。
道路の保守事業をして下さっているのですね。
感謝しています。いつもは気にも留めなかったけれども。
「レッカーは呼んで下さらないのですか?」と警察に質問をしました。
「レッカーはご自分で呼んでくださらないと。
こちら側では何ともできません!」
啞然としました。最初に言えよ!
40分も貴重な時間を無駄にした。
むしろ警察よりも先にこちらを呼ぶべきだった。
今は何時だ?午後三時か?日没まで何時間ある?
眠っていた私の思考回路が稼働しました。
携帯電話はフル稼働です。
左の前輪は曲がっています。
ただのレッカーではいけない。
浮かせるか?荷台に載せるタイプか?
今日中に捕まるだろうか?
JAF に電話します。
「会員ですか?」
「いいえ違います。すぐに呼んでください。」
「今で払っています。任意保険は入っていないのですか?」
「任意保険は入っていません。JAF で手配してください。」
任意保険に入っていないことを後悔しましたが、
そんなことを言っている場合ではありません。
こういう場合は、JAF にもいろいろな部署があるので、
手あたり次第に「同じ名前で」書け直します。
部署の内部で押し付け合いが始まりますが、
どこかが受け持ってくれるでしょう。
多分、現場に一番近いところです。
1時間かかって、電話がきました。
対向車線で事故があってそれが済んだら
そちらに向かうとのこと。
あと2時間も掛かるのか?少なくとも1時間は掛かるな?
だが担当の電話番号と名前は確保しました。
そうこうする内に道路管理者の車は来ました。
警察官たちはこの人たちと顔見知りのようです。
警察官「通行止めにはできないのですか?」
管理者「3時間と決まっているんですよね。その後復帰しないといけないし・・・」
警察官たちは安心したのか?
「では私たちはこれで・・・」と消えて行きました。
私の仕事は、これからです。
レッカー先を決めなくてはいけません。
片っ端から、自動車修理工場に電話を掛けます。
今日は土曜日です。休みの所も多い。
よしんば繋がっても「明日からお盆休みです。」と言うところも多い。
早くないか?後から知ったのですが、部品業者もお休みなので
お盆には早めに休暇を取る修理業者が多いそうです。
それに前輪が逝かれているので、どうせ直せません。
廃品業者にも電話して、引き取ってくれるように交渉しなくてはいけません。
当然ながら最初から廃品業者に引き取ってもらえば良いのですが、
なにせここは田舎です。
都会までは遠い。どうしよう?
レッカー業者が到着しました。もう日は沈みかけています。
道路管理者は、高速道路を通行止めにしました。
これから、約3時間かかるということか???
レッカー業者は、車種、年式、事故の具合を詳しく聞いてきます。
彼は「救出の作戦」を頭のなかで考えているようです。
色々方向を変えながら、私の車を少しずつ移動して行きます。
姿を見ていると「この車が私の命を救ってくれたのだな。」
と思えてきます。
「ありがとう。三菱コルトプラス。ごめんね・・・」
次の仕事は、今夜の宿泊先と移動方法の確保です。
田舎だから、もうバスはないだろう。
明日の作業を考えると修理工場の近くに宿を確保しなければいけない。
「空き部屋はありますか?迎えに来てくれますか?タクシーは呼べますか?」
空きはあっても、迎えには来てくれない。タクシー会社に電話したが留守番電話だ。
めったに掛かってこないのだろうな?
さて、作業は済みました。
高速道路の通行止めは解除されました。
いまは夜の8時です。残された手段も少ない。
レッカー車に私のコルトを積み、私は助手席に座ります。
高速道路を降りるまでのドライブが始まります。
「ご苦労様でした。助かりました。ありがとうございます。」
「車の保管場所に苦労されていたご様子ですが、修理工場には車の状態は話したのですか?」
「いいえ、話しておりません。」
「高速道路管理者には電話しましたか?」
「どこもお休みなのですが、緊急番号#9910 に電話してもよろしいのでしょうか?」
「いいのではないでしょうか?本当に緊急事態なんだし。」
案ずるよりも・・・
高速道路の出口の駐車場が確保できました。
修理工場には「他の業者が引き取ってくれることになりましたので。」
と言ってキャンセル致しました。
最後の仕事です。
駐車場の近くにコンビニがありました。
タクシーは居ませんでしたが、一般車とトラックが数台止まっていました。
やり方は分かっています。
トラックの運転手らしき人が入って行くあとに続きます。
そして、入り口の近くでこう言います。
「この中に、タクシーの運転手さんはいますか?
今夜のホテルに行きたいのですが、タクシーが見つからずに困っています。
あるいは、タクシー会社の電話番号を教えていただけないでしょうか?」と。
トラックの運転手が振り返りこう言います。
「表へでろ。入口で騒ぐな。」
外へ出ると「俺と知り合いということにしろ。」と言われました。
タダで送ってくれるそうです。
申し訳ないので、おにぎり2つとお茶で手を打つことにしました。