「スパイを紛れ込ませるってことは、俺達が何か行動を起こさないかってことも気にしてたんだよな? だったら、そのスパイは俺達の人質をとって奴等と取引する作戦は知ってたはず。
仲間に伝えれば、事前に防ぐことぐらいワケないんじゃないのか?」
塚越の問いに、顎を撫でながら大高が答えた。
「そこは不幸中の幸いだったな。茂央は敵の気を引いて狙い打つ方法しか話してなかった。
だからそういう作戦があがったことはわかっても、伝わっても、肝心の打開策はわからなかったんだ」
「怖っ…。ギリセーフだったってことか」
「大高の推論では、スパイはどこかで内田清美を脅し、殺人を強要した。
銃をどこかに隠させ、今、内田清美が言えない状態にしている。どうせそいつも名乗り出るような真似はしないだろう。よし、皆――服脱げ」
全員の目が、動揺の色に染まった。
こいつは自分が何を言ってるかわかっているのか? 沈黙が、一同のそれを代弁した。
沈黙が襲いかかっても尚、茂央はまるでマネキン人形のような表情を一つも揺るがさない。
「茂央君、そこまでやらなくてもいいでしょ? 冗談キツいって」
「いいから脱げって。全員ここで。ほらサッサと」
言いながらも茂央はブレザーを投げ捨て、セーターとブラウスをも自ら剥ぎ取る。
やがてはベルトすら床に着地し、チャックに指がいくまでにあまり時間はかからなかった。
「おいおい、長野といい湯浅といい、露出狂の集まりかよ特進クラスは」
ズボンまでもが床へ着地し、ついにパンツへ手がかけられようとした一瞬先に、茂央は股間に強い痛みを感じた。
意外にもそれは、梓という名のガールフレンドによる行動で、彼女は茂央のパンツを前方から鷲掴みにし、上へ持ち上げている。
呆気にとられた茂央は、ただ呆然と梓を見つめた。
「アンタの意見には賛成だけど、流石に男女はわかれた方がよくない?」
「――そうだな。じゃあ、女子は全員保管室で、梓、お前が検査をしてくれないか? 勿論、お前が最初に全員の前で脱いでから」
この場合の『全員の前で』と言うのは、『“女子”全員の前で』という意味である――なんてことは、流石に暗黙の了解として理解出来たのだろう。
梓は黙って頷き、大きな目を真正面に向けた。
「皆、確かに女子だけに限られても嫌だって子がいることもわかってる。でも今は、そんなことを言ってられる程あたし達に余裕はない。多少のことは我慢して頂戴」
形式上、全員は納得した。