その日私は、これまでとは異なる方法で応援をした。

「現状維持ではダメだ」

 


周りからは反対された。

それでも私はチャレンジした。



今までよりも、もっと良い応援ができると思ったからだ。



終わった頃には、日が暮れていた。

長い1日だった。





試合後の反省。


「負けたのはお前達の応援が不甲斐なかったせいだ。」



幹部が冷たくそう言い放つ。

返事は「ハイ」以外許されていない。



下級生の手はボロボロに破け、喉ガラガラ。

学ランも革靴も1日でダメにした。



周りから「クスクス」と声が聞こえる。


「チャレンジせず、いつも通りの応援をやってればよかったのに

そんな声が聞こえてきた。


私のせいで後輩を巻き込んでしまったと、申し訳なく、惨めな気持ちになった。





レガッタ応援の帰り。


疲労困憊でお腹も空いていた。


戸田公園駅のホーム。

彼と偶然2人きり。

「ご飯でも行こうか」

大勢で食事することはたくさんあったが、2人きりで食事するのは初めてだった。



いろいろな話をした。

家族、部活、勉強、恋愛


将来の話も少しした。


 





「若林さんのようなリーダーになりたい」

真剣な眼差しで彼はそう言った。









その後のことはあまり覚えてない




上級生と下級生。

そんな仮面は取っ払って、自由闊達な議論を延々とした。

 



「応援とは何か」

「リーダーとは何か」




宝物のような時間だった

それだけはしっかりと胸に刻まれている。




     

 



いつ頃だろう

彼から急に手紙が届いた







そこには「自我作古」の意味が書かれている。





『周囲に迎合せずに、新境地の開拓に挑む気概と勇気を表す意味が自我作古という言葉には含まれています。』


 


「「自我作古」ってどういう意味ですか?」

今でもたまに手紙を見返すことがある。


 


彼は今、霞ヶ関。

官僚として働いている。

  



いつかまた。


あの日のように、お互いの仮面を取っ払って共に自由闊達に語り合える日がくると私は信じている。