今日は松浦亜弥ラストツアーの最終日
ここは北の果て北海道は札幌
たった今
松浦亜弥のファイナルライブが幕を閉じたところだ
オレはヲタTをすぐに脱ぐのがなんとなくもったいなくて
そのまま会場の外に出た
夜風がとても心地よい
辺りはもう一面真っ暗になっていた
「今日でさよならです
大事な・・・
とても大事なことなので2回言いました」
迷子の少女はそんな大事なことを簡単に言った
台風一過
さすが晴れ女の面目躍如といったところか
開演前に降っていた激しい通り雨は
いつのまにかすっかり上がっていた
札幌の夜空には満点の星が輝いていた
「なんだよそれ
なぁ
また一緒に逝こう
たっぷり松浦亜弥の話を聴かせてやるからさ」
「それはもうできません
今までどうもありがとうございました
おかげで無事に目的地にたどり着くことができます」
少女はぺこりと頭を下げた
「やっぱりそうだったのか・・・
でもお礼を言うのはこっちの方だ
こんなダメなオレにつき合ってくれて
本当に感謝してるよ
今まで長いこと迷わせちまって悪かったな」
「ようやく
自分の進むべき道が見つかったんですね
答えが・・・
答えが見つかったんですね」
上を・・・
星空を見上げていた
「あぁ逝くべき道は決まったよ
やっと決心がついたよ
オレは・・・
オレは今日この日までずっと迷っていた
でも自分の心までは騙せなかった」
「やっと気がついたんですね
そう私は迷っているあなたの心自身・・・
あなたの逝くべき道が決まったのなら
私も前に進むことができる」
ここにきてようやく気付いたのだ
迷子だったのは彼女ではなく
オレの方・・・
「そう私は迷っている人にしか
つまりあなたにしか姿が見えない
だから決心のついた今のあなたとは
もうこれ以上一緒に逝くことはできません」
「お前と道を探してる間はめっちゃ楽しかったよ」
亜弥ちゃんへのつのる想いをめぐらせながら
向かうコンサート会場までの道
楽な道程ばかりでは決してなかったはずだが
なぜか良い思い出しか浮かばない
オレの目からいつの間にか涙がこぼれた
喜びの涙?
いや違う
悲しみの涙?
それも違う
あぁそうか・・・
やっと見えた
やっとわかった
こういうことなんだ
これが・・・
LOVE涙色・・・
「いいんですか?
2、3年後なんて簡単にあややは言ってますけど
戻ってきて居場所があるとは到底思えませんけどね
あややはもちろんあなたの居場所さえ・・・
もしかしたら4、5年かかるかもなんて
八王子で泣きながら話してましたよね
最前列で見てたんだから覚えてますよね」
「この宙にきらめく星の光は
オレの目に届く前に
それこそ気の遠くなるような時間を旅してきてるんだぜ
4年や5年くらいたいしたことないさ」
「他にやりたい事が見つかったとか進学だとか
体のいい理由を見繕って
消えて逝ったアイドルなんていくらでもいますよ
この業界では
・・・よくあること
あややの言う楽曲制作に集中するためなんて理由を
まさか本当に信じてるわけじゃないですよね?」
「もう・・・
充分頑張ったじゃないですか
こんなサイクルの早い世界で
9年間も亜弥ヲタを・・・
一推しを守ってきたんですよ
今から真野ちゃんやエッグに流れたって誰も責めたりしませんよ
むしろそれが自然の流れです」
「今日のファイナル公演で
ダブルアンコールで
オレの一番大好きな歌・・・
100回のKISSを歌う亜弥ちゃんを見て
あらためて思ったんだ
オレは亜弥ちゃんをキライになることが怖い
亜弥ちゃんを失うのが怖い
これまでのオレの亜弥ヲタ活動は
お世辞にも恵まれたものとは言えなかったけど
だからこそ余計に亜弥ちゃんの事を想う気持ちが
強くなったならそれで良かったとまで思う
それぐらい今のオレは亜弥ちゃんに参ってしまっている」
「本当にあややのことが好きなんですね
今日のあなたのピンクのサイリウム
とても綺麗でしたよ
この宇宙に咲くどの星よりも・・・
でも絶対に後悔しますよ」
「この世界に絶対解ける問題なんて無い
オレは亜弥ちゃんから光をもらう
たくさんの星々のひとつでかまわない
亜弥ちゃんがほんのわずかでも光をはなつなら
オレはいつだって輝くことができる」
「決心は固いみたいですね
あややが戻ってくるのは
何年先になるかわかりませんよ」
「年齢をごまかすのは得意なんだ」
「フフフ
そうでしたね
これで私も安心して旅立つことができます
では最後に聴かせてもらえますか
・・・あなたの想いを」
迷子だった少女はオレに最後のリクエストをした
「流行るといいな・・・」
オレは宙を見上げ
流れ星に向かって
今の気持ちをまっすぐに伝えた
「あいたいあいたいあややにあいたい」
想いあふれて
何年後でも
君を待ってる・・・
















