ビンラディンが殺されましたね。ツイッターで速報を読んだときすごくびっくりしました。本当に?まだ生きてたの?っていう信じられない気持ち。
 しかし、そのあとのUSAの熱狂にはもっとびっくりしました。人を殺したことに、まるでひいきのベースボールチームが優勝したかのような騒ぎっぷり。USA! USA!って。この光景を快いと思った日本人があまりいないかもしれない。理解不能って感じですよね。あれは、9.11っがどれだけアメリカ人を未だに狂わせているかの証拠のような気がします。
 日本にも大きな震災が起きて、直接の被災地ではないここ東京でも人々の何かが変わってしまった。消そうとしても消せない過去。その上に立って生きていくことを強いられる大きな挫折。表向きは僕も普段と変わらない生活を送っていますが、先日海外の震災特集番組を見ていたら涙が流れてしまいました。映像を見るたびに、一生こういう気持ちになるかもしれない。でもそれが過去とこれからの未来を繋ぐために必要かとも思います。remember 3.11
9.11が起きたとき僕は中学生で、飛行機が突っ込んでビルが見事に倒壊する映像を見る僕は、衝撃映像番組の視聴者でしかありませんでした。でも何となく今ならアメリカ人の気持ちがわかるような。たとえば津波が殺されたらみんな歓喜するでしょう?有り得ませんが。
 ビンラディンは人であって、人ではありません。妻がいて息子がいた2m近い大男である市民ビンラディン、一方で世界をどん底に陥れた悪者テロリストのビンラディン。アメリカ人は後者の死に歓喜したのですよね。ビンラディンという悪の概念に。アメリカの敵の象徴であるビンラディン。それは血の通っている人間ではない、ただの概念。地震や津波と同じような災厄。
 彼の死に喜んだ多くは大学生以下の若者らしいです。彼らは9.11が起きたときクソガキだったのです。たぶん大人たちにビンラディンをアメリカを脅かす悪党として認識させられたんじゃないでしょうか。だったらあの異常な歓喜もある程度納得できます。
 もちろん、アメリカ人全員が歓喜しているわけではないでしょう。クソガキにファンがいっぱいいる歌手のケイティーペリーさえもツイッターで、「目には目をは、世界を平和にしない。」というようなことを書き込んでいました。
 オバマは正義が果たされたと会見で言ったそうです。政治面だけで言えばそのとおりだと思いますよ。オバマは次の選挙で確実に勝てる最強の武器を手にしたんですから。でもそれは政府の勝利であって、民衆の勝利ではない。そこを勘違いしちゃだめですよね。これからアメリカ市民はまたも報復の危険に苛まれることになりますから。
 何が正義だ!と怒る人がいっぱいいますけど、オバマは政治家としての正義を遂行したのです。今はギリシャの時代ではない、ひとつの正義が共同体に適応されるなんてことは有り得ない。人の数だけ正義もあるという時代。それを受け止めて、自分の身の回りだけで自分の信じる正義を実行する時代。うーん、それも古いのかな。僕は、自分の信じる正義を振りかざすことは必ず誰かの正義を傷つける、ということを承知して実行される正義が、これからの正義だと思います。
 もう何のことやらよくわかりませんが、グラウンドゼロで歓喜する人たちが、アメリカのマジョリティーであるならば、アメリカ人は9.11の教訓をすでに忘れ始めているということになるかもしれません。過去を無視するならば、ビンラディンは何度でも生き返るでしょう。