人は「できていること」ほど見えなくなる


「私、料理が苦手なんです」

そう言われる方とお話ししていると、いつも同じことを感じます。


本当に苦手だったら、そもそも毎日作れません。

家族の予定を考えたり、冷蔵庫をのぞいて献立を考えたり、

時間がない中で段取りを組んだり。

それだけでも、十分すごいことなのに。


でも本人はそれを

「できて当たり前」

「みんなやっていること」

として、まったく評価していない。


人は不思議なもので、

できないことは大きく見えるのに、

できていることほど、見えなくなっていきます。


料理でも同じです。


味が少し濃かった日。

焼きすぎてしまった一皿。

家族に何気なく言われた一言。


そんな出来事は強く記憶に残るのに、

その前後に何百回も作ってきた

普通においしく食べてもらえた食事は、

ほとんど思い出されません。


だから気づくと、

「私はいつも失敗している」

「向いていない気がする」

そんな結論だけが残ってしまう。


でもそれは、料理ができていないからではありません。


ただ、当たり前にできていることを、

脳がもう評価しなくなっているだけなんです。


段取りを考えていること。

火加減を見ていること。

家族の反応を覚えて、次に活かしていること。


それらは全部、立派な料理の力です。


料理がなかなか上達しないと感じている人ほど、

実はとても真面目で、丁寧で、

基礎をもうしっかり身につけています。


だから必要なのは、

もっと頑張ることでも、

新しいレシピを増やすことでもなくて、


自分の中にもうある

「できている」をちゃんと見ること。


これは段取り力。

これは経験。

これは感覚。


そうやって言葉にした瞬間、

料理は少しずつ安定し始めます。


もし今、

私って料理向いてないのかな、

と感じていたら思い出してほしいんです。


それは、できていないからではなく、

できていることが見えなくなっているだけ。


今日作った料理で、

一つでいいので、

ここはちゃんとできたと思えるところを探してみてください。


その小さな確認の積み重ねが、

料理を楽にしてくれます。