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CPIが上がっても景気回復を実感できない日本──内部留保偏重が生む“手取りが増えない構造”


近年、「CPI(消費者物価指数)が上昇している」「物価が上がっている」という言葉を耳にする機会が増えました。しかし、国民の多くが「景気が良くなった」と感じていないのも事実です。

その裏側には、企業収益が上向いても、国民の手取りに反映されにくい日本特有の構造的問題が横たわっています。


本記事では、その核心にある “内部留保偏重構造” と、手取りアップを阻むメカニズムを整理します。


■ 物価上昇なのに景気回復を感じない理由


1. 物価だけ上がり、賃金が追いつかない


CPIは上がっても実質賃金はマイナスが続く。このギャップが国民の生活を圧迫し、景気回復の実感を奪っています。


2. 値上げは進むが、家計の可処分所得は増えない


食品・エネルギー・物流など生活必需品の値上がりが中心。家計は防御姿勢となり、消費の勢いは戻りません。


3. 企業利益と労働者の所得が連動しない体質


企業の収益は改善しているのに、賃上げには慎重。ここに、実感なき景気回復の最大要因があります。


■ 内部留保だけが増え、賃金に回らない“構造的問題”


日本企業は欧米と比べ、極めて高い現金保有率を維持しています。

要因は以下の通りです。


1. 将来不安に備えた“貯め込み”


人口減少、市場縮小、税・社保の重さ。

こうした不確実性が、企業を守りの財務体質に向かわせています。


2. 労働分配率の低下


利益は過去最高水準でも、労働者への分配は頭打ち。

株主還元は増えても、給与改善には慎重という構図が定着しています。


3. 長年の価格競争による賃金抑制文化


建設、物流、電気工事など、現場の業界ほど“価格転嫁の不十分さ”が深刻。

収益が改善しても、賃金へ反映されるまでの距離が長い。


4. 二層構造の雇用体系


正社員と非正規の格差が大きく、利益が波及しにくい点も課題です。



■ 結論:内部留保偏重のままでは、国民の手取りは増えない


企業の財布がどれだけ膨らんでも、労働者にしっかり還元されない限り、景気回復の実感は生まれません。

物価上昇に対し、手取りが増えない構造が続く限り、生活の苦しさは改善されません。



■ 手取りを増やすために必要なアプローチ


1. 賃上げの継続性を高める仕組み


・賃上げ計画の数値目標化

・取締役会での人件費戦略の明確化


2. 価格転嫁の正常化


・元請・取引先による単価改定の迅速化

・技能者の労務費を正当に評価する仕組み


3. 内部留保の使途を“見える化”


・設備投資、人材投資、研究開発、株主還元の割合を公開

・どれだけ賃金に回しているかを社会が評価


4. 税・社会保険料の負担軽減


・控除拡大や社保負担の最適化によって、可処分所得を底上げ


5. 労働市場の流動性向上


賃金を上げない企業には人が集まらない——この当たり前の環境整備が不可欠です。


■ まとめ


「企業の内部留保」ではなく「国民の手取り」が増えなければ、景気回復は実感に変わらない。

この構造的問題を解消しない限り、統計上の数字がどれだけ改善しても、多くの人が生活の苦しさから抜け出せません。


日本が再び成長モードに入るためには、企業収益を“内部”に溜め込むのではなく、人材へ、未来へ、確実に還元する経済構造の変化が不可欠だと私は思います。