〈 駅に置き去り事件 〉
付き合ってから3ヶ月目。
この日は私の誕生日と、
彼の誕生日をダブルでお祝いしようと思っていた。
だが、特にお店を予約していたわけでなかった。
ゆっくり美味しいものでも食べよう!
ということになり、何軒もお店を回った。
けれども、どこも満席でお店には入れず。
そんな中、
彼の機嫌がだんだん悪くなって言ったのだ。
口数も減り、
この雰囲気をなんとかしようと
私も頑張るが、
その結果は実らなかった。
とにかくお腹は空いていたので、
「ここなら入れるよ!入る?」
と、私が彼に声をかけるが、
彼はうんともすんとも言わない。
黙って勝手に彼がお店に入り、
私もそのあとをとぼとぼついていく。
明らかに不機嫌モード全開。
こんな人見たことなかった。
メニューを貰っても、
勝手に自分の食べる分だけを頼む彼。
それでも気を遣って彼に話しかける私。
食事が運ばれてくるまでももちろん無言。
食事が運ばれてきても、
彼は無心でひたすら食べ続けた。
私が食べ終わるかも気にせずに、
自分が食べ終わると席を立つ。
えっ?
と私が思っている間に、
勝手にお会計をしている彼。
私はまだ食事中だというのに、
それを切り上げ、
急いで席を立つ。
お店を出てからも、
無言で彼は歩きだす。
しかもものすごい早足で。
私はこの時、お財布も彼の家。
持っていたのは、
携帯電話と定期だけだ。
あっという間に彼の姿はみえなくなり、
私は置いて行かれたのだ。
この日は、仕事道具なども全て彼の家にあった。
彼の家に行くのは不本意だったが、
彼を怒らせてしまった。
と、私は自分を責めた。
定期券に幾らかチャージされていてよかった。
これがなければ、
私は駅員さんのご厄介になっていただろう。
あまりも悲しくて、
泣きながら友だちに電話していた。
とにかく、彼の家の鍵も持っていない。
果たして彼は家に帰っているのだろうか。
家には入れてくれるのだろうか。
そんなに私は悪いことをしたのだろうか。
と、たくさんの不安を抱えながら、
手ぶらで帰路に着く。
彼の家に着き、インターホンを押す。
すごく怖かった。
インターホンを押しても、
家に入れてくれないかもしれない。
そんな恐怖だ。
「はい。」
と、不機嫌な彼の声が聞こえる。
そのあと施錠は解除され、無事家に入ることができた。
これが、モラハラ夫の始まりであった。