「新装開店! 柿生会館 午後6時開店」
午前2時半、新聞に折込広告をセットしていると、目に付いた広告を見ながら、新聞販売店の専業が皆騒がしくなった。
「おい!新規開店だぞ、お前も並ぶか!?」
と、声をかけられた1人の新聞奨学生は手を止めた。
広告に掲載されてる地図は自分の配達区域である。
手を止めた新聞奨学生は、え?と聞き返す。
高校を卒業して上京したばかりの、少年の顔の面影を残した青年は、アニメーションの仕事に就く夢を抱いて、新聞を配りながら奨学金を貰う専門学校1年生、ミサプラハズレ。
パチンコと云えば小さい頃、祖母や父に連れられて行ったっきりやった事も無い。
「行こうぜ!新規開店だから出るよ、なあ。」
「そうそう、教えてやるから。」
いや、でも…と、少し遠慮がちに断りの返事をしたミサプラ少年だったが、悪い先輩に押し切られて、夕刊を配り終えたらその足で並ぶ事になってしまった。
夕方4時半、夕刊を配り終え新聞販売店の専業2人と列に加わる。並びは7、80人くらいだろうか。
並んでる間に、先輩2人に攻略法を教わる。いわく
「とりあえず、5000円打って当たらなければ次の台を打てばいい」
「出目がバラバラの台は当たりが遠い、同じ数字や、近い数字が連続する台がいい台」
「隣が当たったら連鎖反応で当たりが来るから動いちゃ駄目だ、打ち続けろ」
などと数多の攻略法を授かったミサプラ少年、初めての経験にワクワクしながら、開店の時間を待つのだった。
時に1991年、クウェート侵攻から湾岸戦争が開戦したり、コミケが幕張を追放されたりした年の事である。
つづく