博多の女性は美人が多い。色白美白タマゴ肌、まるで博多人形のようだ。
ぼくは1年前を思い出しながら駅の構内を歩んでいた。人の流れはある程度方向が決まっているので歩きやすい。残念ながら佐世保のメインストレートアベニューは歩きづらいのだ。歩行動線がさだまらず、かつ、歩行のスピードがまちまちである。
都会はいいなあと思う瞬間である。
そしてその先には僕を待っててくれるオンナがいる。しかし、1つだけ関所があるのだ。
関所は実に巧妙に旅人をさばいていく。「あなたはどこから来て、どこにいくのですか?」「あなたの交通手形では通れません」などと声を発することはない。人間どおしの触れ合いをぶった切るかのように、「よし」と「ダメ」しかない。欧米人のようだよなあ。
彼に通行手形を差し出すと、瞬時に事を飲みこみ、ベロっと結論を出す。問題がなければベロっとだ舌を「コノヤロ」と心でつぶやいて引っこ抜きながら前進できるが、何かしらの問題があると、こいつはあろうことか「とおせんぼ」をし、更に高い声で「ピーッピーッーピーッ」といかにも鬼塚の首をとったかのように周囲に警告を促す。
ガンツ先生のほうがよほど、あたたかみやぬくもりを与えてくれると信じている。
一般庶民はビビる。皆の視線は集まり、すぐ後ろにいた人に不快感を与え、さらしものにするのだ。ただ、彼自信が交通手形をたまたま読めなくても関係ない。自分のミスさえも、他人に押し付け、型にはまっていないものはすべて不可なのである。典型的な僕の嫌いなヤツでもある。こんなヤツに時間を取られては折角待ってるオンナに申し訳が立たない。最近は朝も立たない。
僕はいそぎ足でオンナのもとへ向かう。長いエスカレーターに悠長に乗って運ばれていくのなんか待てない。今まで生きてきたなかで運ばれて嬉しいのは、グラバー邸の「動く歩道」と「江の島のエスカー」ぐらいである。
エスカレーターの動力に自分の全身力を込めて階段を上がるようにステップを踏みしめる。視野に明かりが射し、きらきら輝いている色白のオンナがそこに待っていた。ひざを崩して横に座り片手をついて少しアンニュイに僕を待っていてくれた「のぞみ」である。