一家の主の女性達が怒って裁判を起こした結果ですが…
この訴訟、最終的に最高裁判所まで争われました。
つまり、一審の地方裁判所で判断され、その後、高等裁判所で判断され、最後に最高裁で決着がついたということです。
一審の裁判官は、男性のみが入会権者になれるという規定は、憲法14条(法の下の平等を定めた規定。)に違反するので、無効(効力がない)として、女性達の主張を認めました。
入会権者達は納得がいかないということで、高等裁判所の判断を仰ぐことにしました(控訴といいます。)、そして、高等裁判所は…
高等裁判所の裁判官は、入会権者を男子に限った部分もそれなりに合理性があり、特に、入会権は、過去の長い年月によって形成された地方の慣習に根ざすものであるから、そのような慣習がなお存在しているときは、最大限尊重すべきであり、
そのような慣習に必要性、合理性がないということから直ちに無効にはならないというようなことなどを述べて、
結局、入会権者を男子に限ったとしてもよいという結論になりました。
難しいことを言っていますが、結局、高等裁判所の裁判官は、慣習について、古くからの慣例、しきたり、伝統であるから、それが多少不合理な差別を含むものであっても、出来る限り尊重しましょうという発想に基づいているといえます。
ただし、ここで問題なのは、古くからの慣例等といっていますが、つまり、歴史的・時代的背景があるということから、それを尊重しようと言っていますが、その歴史的・時代的背景の中には女性蔑視の歴史(封建制度や家制度を反映した女性差別)が入っており、それをそのまま認めて良いのかという問題があり、高等裁判所の判断は、その点をあまり考えていないということです。
長い間に形成された秩序というものも大事ですが、問題は、長い間に形成された秩序の中にも差別観念の入る危険性があり、それを見過ごしてはいけないということです。高等裁判所の裁判官は、この点をどのように考えていたのでしょうか。
この訴訟は、その後、最高裁に行き、最高裁の裁判官は、男女の本質的平等を定める日本国憲法の基本的理念に照らし、入会権を別異に取り扱うべき合理的理由を見いだすことは出来ないから、高等裁判所が述べた入会権の歴史的沿革等の事情を考慮しても、差別を正当化出来ないと判断しました。
ようするに、男子のみに入会権者を認める慣習は、憲法(私人間ですから、厳密にいうと公序良俗)に反し、無効という結論になりました。
そして、もう一度審理するようにとして、高等裁判所に判断をやり直すように言いました。
難しい問題ですが、現代の日本でも男女差別が問題となることはあるということです。
皆さんも、どこかに男女差別(ジェンダーバイアス)がないか、考えてみてはいかがでしょうか。
終わり…