ボルタンスキー展を見て
照明を落とした会場で、地図付きの解説を手に彷徨する人たちを眺めて、つい聖地巡礼という言葉が浮かんでしまった。
四国巡礼とかサン・セバスチャン巡礼というのではない。いま流行りのアニメや映画の舞台になった土地の巡礼。
それからアウシュビッツを思った。
僕はポーランドのクラコウに住んだことがあり、二度収容所跡を訪ねた。もう40年も前の話だ。その後も人を案内して何度か訪れる機会があった。
行くたびに、観光客が増えるのに比例して、死者の囁きが聞こえなくなっていくような気がしていた。最後に行ったのは「自由化」後で、ショックを受けた。イスラエル政府が資金を出して、見やすく理解しやすい展示デザインにしてしまっていたのだ。テーマパークにする気かい、と思った。もうどこにも死者の居場所はなくなった、そう感じた。
国立新美術館の展示で同じものを感じた。総花的に並べる作品かよ。
死とか死者を、人間の記憶とか生きた痕跡とかを、そう安っぽく扱うなよ。
そう思ったらわざとらしい映像も、演出たっぷりのインスタレーションも、ひどくつまらなく見えてきた。
新美術館のあと、東京ミッドタウンの21_21デザイン・サイトで「虫展-デザインのお手本-」を見た。当然、死んだ虫がいっぱい並んでいる。でも、その虫たちに最大限の敬意が払われてデザイン、アートとの関りが考察されている。作品化されている。
すっとした。
今年見たもっとも見ごたえのある展覧会でした。
11月4日までです。