(2) 自動車の分析も多難だった
自動車のスタイリングの分析は、日産自動車からの依頼でした。
経緯は、商品企画の方たちへのセミナーで、
「角型と丸型の時代が周期的にやってくる」
と言う仮説が、衝撃的で、それがデザインセンターに伝わり、
是非データを使って分析証明をして欲しいと頼まれました。
「できますか?」と聞かれたので、即座に「できます!」と答えました。
音楽と違って目に見えるものですから、簡単だと思ったのです。
もう一つは、トヨタとマツダのデザイナーの方に、分析のアドバイスをしていたので、
見当は付いていたのです。
分析には「角型丸型」のような要素設定が一番重要な仮説です。
これを間違うと何の周期も出てこず、徒労に終わります。
分析の準備のために、過去25年分のベスト10のデータをもらいました。
あとは、写真です。
ところが日産車以外の写真はないのです。
どうしようと言うことになり、私が自動車工業振興会の図書館に行って、
集めてくることになりました。
過去の全車種のカタログが集められているのです。
2週間毎日通って、朝から晩まで
それをカメラで接写して、データを作りました。
と一口に言っても、4年毎のモデルチェンジで、10車種ですから、60デザインです。
それと大衆車、小型車、中型車と3ジャンルに分けましたので、180種類になります。
これに、2年毎のマイナーチェンジを入れると、なんと360種類にもなります。
この写真を見ながら分析するのですから、目がくらくらします
年度ごとのベスト10の写真をパネルにして、眺めはじめました。
丸型と角型は、実際に判別しようとすると、意外とあいまいなのです。
一台一台を判定しようとすると、「どっちだろう?」と、冷や汗が出てきます。
分析期間は3ヶ月としておきましたが、あっという間に1ヶ月が過ぎました。
これはまずいと思い、誰でもが判定できる、判定基準を作ることにしました。
これが奏して、急にスムーズに分析が進みました。
客観性のために、同じ判定基準で、メーカースタッフ、代理店スタッフにも
判定してもらいました。
角型丸型のシェア比にデータ化して、年度ごとの推移をグラフ化すると
見事にシェア比が、周期的に逆転していたのです。
丸型と角型のトレンドは周期的に繰り返していることを証明できたのです
日産自動車のデザインセンターで、分析発表会が行われました。
最初は疑っていた当時のデザイン部長さんが
証明したとたん
「今日は色々質問を考えてきたけど、全部忘れた。
これはうちのデザイン戦略として使おう。」
と言われ、
これがその後に続く、いろいろな発見と体系化への大きな自信になりました。
(3)初代シーマの挫折と栄光
分析発表が評価され、具体的な車種のコンサルティングを依頼されました。
1987年最初に依頼されたのが、「シーマ現象」を引き起こした、初代シーマです。
原寸大のクレイモデルを見てみると、丸いのはいいのですが
プロポーションのトレンドを外しています。
これは、肩が出て下が絞れるプロポーション(逆三角形)のトレンドの時と、
なで肩で下が膨らんだ(2009年現在のように)、プロポーション(正三角形)の
トレンドが28年周期で繰り返しているのです。
これもデータで証明しておきました。
トレンドは逆三角形なのに、シーマは逆だったのです。
それで、社内で評判が悪く、「ナマズ」と呼ばれていました。
プロポーションは、ファッションも同じで、バブル期当時は、
みんなアメフトみたいに肩の大きいファッションでした。
原因がわかったので、あとは簡単です。
デザインの課長さんに、「肩をぐんと出して、裾を思い切り絞ってください。」
とアドバイスしました。
言うのは簡単ですが、やる方はタイヘンです。
原寸大のクレイモデルの、全部のバランスを変更するわけですから
大ごとです。
それでも全面変更してくれました。
こうして、翌年「シーマ現象」を巻き起こす、初代シーマは誕生しました。
この分析の成果は、同時期のセドリック、セフィーロ、ローレル、シルビアの
大ヒットへと繋がっていきます。