宝塚が好きだった。
大劇場に月1回、小劇場には年2回行くくらいの、ライトな宝塚ファン。
そして、日本の古典が好きだった。そういう友達も多かった。

だから。友達に誘われたから。そこそこ興味もあったから。軽い気持ちで観に行った『月雲の皇子』。

そこで、珠城りょうに出会った。
観劇後、しばらく客席から立ち上がれなかった。

生まれて初めて、ファンレターを書いた。
生まれて初めて、入待ち出待ちをした。
生まれて初めて、お茶会に参加した。

月雲の皇子が再演されると知って、生まれて初めて遠征した。
スカイステージもこのとき加入を決めた。

珠城さんが主演だということで初めて新人公演も観て、続くバウ主演公演も観劇して、珠城さんの舞台の完成度の高さに改めて感動した。

真ん中が似合う人。そんな印象が強くて。

この人はトップになるんだろうなぁ、とぼんやり思っていた。
まだ初めてのことばかりで、ファンになったという自覚すら薄かったあの頃。

新人公演を卒業した、初めての公演『1789』で、なーんとなくドキッとした。

珠城さん……いい役貰いすぎてない??

期待されてる、若手ホープなのはわかっていた。
そもそもバウ初主演公演で、再演を、しかも東上するなんて、まったく異例のことだとも。

だから、いや、もちろん嬉しかったけど。2幕の見せ場の場面もめちゃくちゃ似合っててカッコよかったし。

でも、この当時の、明日海りお組替え以降2番手が不在である月組で、上級生もいっぱいいて、なんなら二番手候補クラスのジェンヌさんがいっぱい月組に組替えしてきてるのに、下級生の珠城さんがこんな美味しい役貰っていいのかなって思った自分も正直いた。


その次の公演で。

珠城りょうは二番手になった。


(゜〇゜;)???



そしてその次の次の公演で。


珠城りょうはトップに就任した。



(゜〇゜;)?????




いやいやいや……。




頭追いつかねぇよ!!!!!




で、この頃から、珠城りょうに対するアンチコメントを目にすることが爆発的に増えた。

いやあの、これまで、そういうアンチさんについて何も言及してこなかったけど、今日という日だから一つ言わせて。


気持ち、めっちゃわかるよーーー!!!


珠城さんが好きで、珠城さんを応援してきた私ですら、頭追いつかなかった事態ですよ。

そんなん、珠城さんを知らなくて、珠城さんの主演舞台を一つも観たことがない人(この時点でかなり大勢だったのでは??)が納得できるかって話ですよ。
それが、二番手候補に挙がってた月組上級生のファンの方なら、なおさら。


珠城りょうはトップになる人だろうなぁ、とは思っていた。
でもまさか、龍真咲の跡を継いで、北翔海里・早霧せいな・朝夏まなと・明日海りおと肩を並べて(つまり、紅ゆずる・望海風斗・真風涼帆よりも先に)トップになるとは思ってもみなかった。


そして珠城さんは、言葉を飾って自分をよく見せようとする人ではなかった。


トップ就任のインタビューで、次期トップが決まったときの気持ちについて、珠城さんは

「素直に喜べなかった」
「学年的なことを含めて、色々なことが追いついていない」
「私がトップに就任することを喜ばしく思う人は少ないのではないか」

と語った。


それを聞いて私は……なんというか、なんとも言えない気持ちになった。
とにかく珠城りょうを応援しなきゃ!!と思った。
周りから聞こえてくるのはアンチばっかりだったけど、私の応援が焼け石に水程度であろうと、珠城さんに届けばいいと願って。


研9の珠城さんがトップで、たった1コ下で学年の近い愛希さんが相手役で、二人より5学年以上うえの美弥さんが二番手で。

明らかに歪な三角形で、新生月組はスタートした。



ここで予想外のハプニングが発生。



新生月組があまりにも魅力的すぎた。



新公時代から応援してきた珠城りょうがトップで、
トップ娘役さんの中で一番好きだった愛希れいかが残ってくれて、
紅5で応援してた美弥るりかが二番手羽根を背負ってて、
雪組で大好きだったれいこひとこのうち月城かなとが組替えしてきて、
組配属する前から気になってた暁千星が月組で活躍し始めてて、
よく考えたら、こんなん私得以外の何物でもない組が誕生してた。


そしていつしか私は、"珠城りょう"が好きなのではなく、"月組"が好きなのだと思うようになった。


しかし、そんな「私得な組」も、大きく揺るがす事態が発生する。


愛希れいかの退団と、それに続く美弥るりかの退団。


歪な三角形、でも、私の大好きだった三角形の、2つの頂点が月組から消えていった。



この頃が  本  当  に  本  気  で  しんどかった……。
珠城さんがトップになったときでさえ、アンチ地獄で死ぬかと思ったのに、まさかそれを軽く超える事態がやってこようとは…………。

しかも私、このときも、アンチしてる人の気持ちが手に取るようにわかったんです。
そりゃそう思うよね……そりゃそう思うよ……。

二番手が、トップより上級生であること。
二番手が、トップより先に退団すること。

どちらかならば先例はあるけれど、どちらも当てはまる事例は、今までにはなかった。

未曾有の事態に、責められるのはやはりトップなのだ。


一つ、たった一つ救われたことがあるとすれば、「そんなこと言わないで!」と声を挙げる人の数が、珠城さんが二番手になったとき、トップに就任したときに比べると、格段に増えていたこと。

あのときから、珠城さんは実力で、これだけたくさんの人を味方につけてきたんだな……と思ったら、少し、ほんの少しだけ、救われた。



それでも私は、「珠城りょうのファン」を名乗るのがすごく恐くなってしまった。

私が好きなのは、あくまで「月組」。
そう思い込もうとした。


もっと正直に言えば、「珠城りょうを好きでいること」をやめようと思ったのだ。


疲れていた。
すっかり、疲弊しきっていた。


珠城りょうに対する厳しい意見に、自分事のように胸を痛めることに。

珠城りょうを傷つけようとする人に、傷つけられることに。


人を好きになっただけで、応援したい人がいるだけで、なんでこんなに辛い思いをしなきゃいけないのか、と思った。

なんで、自分のこと以外で、こんな胸が張り裂けそうな思いをしなきゃいけないのか。

私は何も、何一つ、悪いことをしていないのに。




それでも、出来なかった。


月組の舞台を、珠城さんの舞台を観る度に、「あぁ、私は、珠城りょうの舞台が大好きなんだなぁ……」と嫌でも実感させられた。

真ん中が似合う人。
最初に抱いた印象は、ずっとずっと変わらなかった。


どこが好きかは、うまく言えない。

何か一曲聞いて、その歌声に感動するとか、
ショーの一場面を観て、ダンスに魅了されるとか、
ポート写真が美しすぎて、一目惚れしちゃうとか、
スカイステージの番組で、トーク力で視聴者を笑わせるとか

そういう惚れ方ではなくて、

ただ、劇場に行って、三時間、一つの公演をじっくり観劇して、初めて珠城りょうに惚れていると気づかされる。

珠城りょうの魅力は、そういう魅力だった。


はじめは、たまたま私が好きな役を珠城りょうが演じているだけだ、と思ったけど。

そうじゃなくて、珠城りょうの芝居心というか、演者魂というか、そういうものが一等すてきなのだと気付くのに、時間はかからなかった。




好きでいるのは、こんなに辛いのに。
それでもファンでなくてはいられなかった。


そんな珠城りょうの退団が、今日、発表された。




まだ、うまく、言葉にできない。


でも、珠城さんがトップになったとき、アンチが荒れ狂う中で、これで珠城さんが傷ついて、すぐに退団されたらどうしよう……と、実はそんなことも考えていた。

負けないで。
誰よりも早くトップになったんだから、誰よりも長くトップでいて。

ずっと、そう思っていた。

公演ラインアップが発表されるたび、あと一年、あと一年だけでいいから、宝塚の男役でいて、と願った。


それは今も変わらない。
あと一年、男役でいてほしかった、と思ってる。


でも、それと同じくらい、珠城りょうに、激動の宝塚人生を生きた無敵のヒーローに、お疲れ様、ありがとう、って言いたい。



珠城りょうを好きでいるのは辛かったけど、珠城りょうを好きになれて、本当に良かった。

自分が、入団して10年も経たないうちに組を背負う立場となった人に罵詈雑言を浴びせるような人間ではなくて、その魅力を理解でき今は感謝しかないと思える側の人間で、本当に良かった。


月組を、珠城りょうを、好きだと言うことが恐いと感じたこともあったけれど、
私は今、あなたが率いる月組を好きになれたことを、何よりも誇りに思います。


最後の日まで、ついていきます。
最後の日まで、私を魅了してください。