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以下、2017.07.26の記事。
当時のペンネームは、ハクジュでしたが、
もう一つ、葛(かずら)という名前が
ありました。
ダークサイドに落ちると、
葛を名乗っていたような気がします。


[バイオレンス・ラブ]
 
(注意:た〇〇あきこ、
清〇よしこが何者かわからない読者さんはvol.95「ブラックペッパー⑭」
をご参照ください)
 


罠だった。
出口のない夜の巨大倉庫に
追い込まれてしまったのだ。
きれかかった裸電球があちこちで
蜘蛛の巣を照らしている。



ーーこんなことになるなんてーー
た〇〇あきこ(仮名)は
泣きたい気持ちで清〇よしこ(仮名)と
走り続けた。
 


背後から巨悪が迫っていた。
蔓(かずら)だ。
逃げる二人にじりじりと迫ってくる。
そして弄ぶような哄笑。


「ほほほほほ! 名札を見せなさい、名札を見せなさい」

その姿にあきこは悲鳴をあげた。
「いやあ! 蔓が重力を無視して天井をまっ逆さまに蛇行して来るう! よしこ、私もう駄目」
「あきこ、諦めたら駄目よ!」


よしこはあきこより年下なのに、
お姉さん気質でよく世話を焼いてくれる。
今のあきこにとってよしこだけが光だった。


「ほほほほほ、名札を見せなさい」
「きゃあぁぁぁぁぁ! 蔓が飛んだあ! 誰か〇キジェット持ってきて!」
「あきこ、そんなもの効かないわ」


あきこがパニックを起こすと、
よしこは冷静に諭してきた。
あきこはもういい、と思った。
よしこだけでも生き延びてくれればーー


「よしこ、膝が笑っているの。もう私のことは置いていって」
「何言ってるの。出来るわけないでしょ。ちゃんと走って!」
「でも」
「走るのよ! 生きることにしがみつくの!」 


あきこはよしこに叱咤されて
べそをかきながら走り続けた。
人より大きい左右の胸がバウンドして、
右によったり左によったり、
科学的根拠に基づいて
八の字に回転したりして、
持ち主のあきこを翻弄するのは何故だろう。


「ほほほほほ! 名札を見せなさい」
「いやあぁぁぁぁぁ! 蔓が壁と壁を跳躍して襲来してくる」
「ほほほほほ! 名札、名札あ!」
「きゃあぁぁぁぁぁ! 蔓が無駄にトリプルアクセル! やらなくていいパンモロが年齢と体形的に恐いぃぃぃぃぃ?!」


あきこは恐怖に叫び続け、
何度も自分を見失いかけた。


「ほほほほほ、無駄無駄無駄無駄」
蔓は宙返って、
逃げる二人の行く手を阻む形で着地した。
「あなたはシゲン薬局の清〇さん、
あなたはイレブンファイブのた〇〇さん、
見せてもらいましたよ。ほほほほほ」
気のすんだ蔓は、もう一度宙返り。
人知を超えるスピードでその場から
去って行ってしまった。
 
 
よしことあきこは地べたにくずおれた。
「何てこと……うっ、ゴホッ、コフッ、こおっ、こてこてこてこて?!」
「てりてりてりてり?!」
「すべすべすべすべ?!」
「みちみちみちみち?!」
二人は絶叫しながら喀血し続けた。
よしこは気力を奮い立たせるように、
自分の口を拭った。
「くっ、名札を見られると命にかかわるダメージを負うのは私たちの宿命……。ても、オノマトペ満載で喀血しなければならないのは、何て……何て悲しいの」



「そうね。じゃー名札つけなきゃいーじやんってツッコミは私たちの世界では的を得ていないわね……。つけなきゃいけないのよ……」
「ううっ」
「よしこ、しっかりして!」


よしこは危うく意識を失いかけたが、
精神力だけでもちなおした。
「大丈夫。全身の4分の3の出血くらいで死んでたまるものですか。あきこ、生き延びてやるのよ」


「でも、名札を、名札を見られてしまった。私たちどうなるの!」
「わかってないようね。私たちは名札を見られた。蔓はぱんつを見せた。どっちがヒンシュクかはわかりきっているわ。大丈夫、大丈夫よ……うっ、しましましましま?!」



「よしこぉぉぉぉぉ! しっかりして」
「名札を見られ、ぱんつを見せられるのがこんなにダメージになるとは……、蔓、恐ろしい敵だった」
「よしこぉぉぉぉぉ!」


よしこは力尽きてどさりと倒れた。
あきこが彼女の上に身を投げ出すと、
よしこの肌はひんやりと冷たかった。
よしこはあきこをなだめるように、
青ざめた頬でうっすら微笑んだ。
彼女のかすれた声が続いた。


「私たち……勝ったのよ。でもこんなことになるなら、せめて……あなたと一緒に、私、わた……し」
「よしこ?! よしこ! よしこ! いやあぁぁぁぁぁ!」


迷路のような巨大倉庫で
あきこの絶叫が轟きわたった。
明日は太陽が包んでくれる。
明日は真昼の花が咲く。
けれど明日、
よしこはもう笑ってはくれないのだ。
あきこは力の限り号泣した。
妖艶な夜の精霊が
背後からあきこを抱きしめ、
一緒に泣いてくれた。
 
(完)
 



[なんちゃってあとがき]
 
この作品、怒られるんじゃないかな……。
台風の日にインターホンが鳴って
玄関開けたら、
トイレットペーパー12ロールダブルを
持った池田先生が現れて、
無言の往復ビンタを繰り出してくるとか……。
本当にごめんなさい、先生。

2022.10.30加筆。
なんで池田先生に謝ったか、
覚えてない……。
何か、パクリ箇所があったんでしょうか?
今となってはわかりません。

 
私は団塊ジュニアなので、
親の世代が女言葉を遣っていました。
アニメ、マンガの女性キャラも
全員女言葉の時代です。


ですから自分の作品を現代風にするため、
女性キャラから女言葉を排除するのは
至難の技でした。
現代語遣わせるのは簡単ですが、
魅力を出せるかどうかが問題なんです。
  

今は、少しクセのある子になりますが
現代語女性キャラを
動かせるようになりました。
女言葉は楽しいツールとして遣っています。
昔の少女マンガや
昼ドラっぽくしたくなったら女言葉とか。
 

特訓中は辛かったけど、
今は現代語も女言葉も満喫しています。
次の課題は視点の統一と、
下手くそな代名詞使いを直すことです。 

 


 
 
失礼いたします。
ご覧くださった方に感謝。