元夫から家庭内暴力(DV)を受けたとする女性の住所が書かれた警察官作成の調書をめぐり、奈良地検に在籍していた検事が別件で逮捕された元夫の弁護人に住所部分を隠さずに開示していたことが分かった。その後、女性には捜査に協力したことを責める元夫からの手紙が届いたという。
 女性は「個人情報を隠すと約束されて調書の作成に応じた。検事が元夫に住所を知られないようにする義務を怠った」と主張。「DVによる心的外傷後ストレス障害が悪化し、将来的な転居も必要になった」として国に約200万円の賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。国側は29日の第1回口頭弁論で「個人情報を隠す確約はしていない」と争う姿勢を示した。
 訴状などによると、女性は2002年に元夫と結婚したが、DVを受けて07年に離婚した。一方、元夫は再婚相手との間に生まれた娘(当時9カ月)を死なせたとして12年に奈良県警に逮捕され、傷害致死罪で実刑判決が確定した。
 この事件にからみ、県警の警察官は女性に過去のDV被害などについて聴いた調書を作成したが、検事は元夫の弁護人に女性の現住所を隠さずに開示。女性のもとには12年秋、調書を弁護人から入手した元夫の手紙が届いたという。