佐賀県知事選で、県内の農協を中心に支援を受けた元総務省職員の山口祥義(よしのり)氏が、安倍政権が全面支援した前武雄市長の樋渡(ひわたし)啓祐氏を破ったことは、大勝した昨年末の衆院選の勢いを引き継いで、1月下旬からの通常国会に臨もうとしていた政権にとって打撃となる。
 自民党とともに樋渡氏を推薦した公明党の幹部は「政権が衆院選後、初の大型選挙で水を差されたのは痛い。統一地方選への影響も考えないといけない」と述べた。自民党派閥領袖(りょうしゅう)の一人も「官邸は地方のことが分かっていない」と語り、樋渡氏擁立を主導した官邸幹部を批判した。
 安倍内閣の閣僚も「党内から候補擁立を主導した官邸の責任を問う声が出るだろう。知事選で勝てない原因を探らないといけない」と語った。昨年の滋賀、沖縄知事選でも敗れており、統一地方選直前でもあるだけに政権の地方での弱さへの危惧(きぐ)も広がりそうだ。
 また、副大臣の一人は「農協改革が難しくなるかもしれない。首相も衆院選で勝ったからといって油断しているとダメということだ」と語った。安倍政権は、農協改革を目玉政策の一つと位置づけるだけに、地元農協が推す山口氏に樋渡氏が敗れれば、改革への黄信号がともると懸念。選挙戦中は、菅義偉官房長官や谷垣禎一幹事長、稲田朋美政調会長ら政権幹部が続々と佐賀入りした。
 選挙結果を受け、党内には「首相側には最近、強引さが目立つ。党内でブレーキをかける人が必要だ」(自民党参院議員)との声も出ている。今後、安倍首相が進めるさまざまな改革に対し、自民党の族議員や業界の抵抗が強まる可能性もある。