ペットボトルさえあればプチトマトや枝豆が作れる栽培キット「ペットマト」が年間70万個を売るヒットになっている。パッケージはまるでおもちゃ。コンビニにも並ぶ新感覚の園芸は、アルバイトで園芸店に入った26歳が考案した。今年から米国販売も始まり、中学校の教材にも採用された。
 準備するのは水を入れたペットボトルだけ。キット付属の給水シートが入った棒状ホルダーを差し込み、種をまく。発芽後、付属の肥料を水に溶かせば、あとは収穫を待つだけだ。
 バジルや青じそなどを含め計10種。それぞれキャラクターがあしらわれ、全国のコンビニや東急ハンズに並ぶ。親子連れや20~30代の女性に人気といい、「芽が出た~!」とツイッターなどで育成状況をつぶやくファンも。東急ハンズ梅田店の担当者は「驚くほど反応がいい」。
 発案者は兵庫県川西市の園芸店「緑のマーケット」の長谷川拓也さん(26)。高校を中退して目指したバンドマンの夢をあきらめ、仕事もなかった2009年、店の求人情報を見つけた妻に促されてアルバイトを始めた。園芸は素人だったが、11年から社員に。
 発端は会社の休憩室だった。片井勝社長(66)がつぶやいた。「コンビニで何か売れへんかな」。まだバイトだった長谷川さんが思い描いたのはコンビニにペットボトルが並ぶ光景。「ペットボトルで野菜を育てられないか」
 片井社長は「園芸に携わっていると、家庭菜園でも土は必須という感覚。思いもつかなかった」と話す。
 長谷川さんは小学生のころ、キャラクターを育てる「たまごっち」がはやったことも思い出した。植物をキャラクター化し、11年にプチトマト3万個を商品化。半年で品切れとなり、翌年は10種類に増やした。
 米国企業の目にとまり、今年3月から米国でも発売。関東地方の中学校約100校は4月から教材に。6月の東京おもちゃショーに出展すると、大手ゲームメーカーなどからコラボの誘いも舞い込んだ。
 「正直、驚いてます」と長谷川さん。1個500円(税込み)。