桐原亮司(山田孝之)

「ねぇ、もう一人、子供でも作ったら?」


弥生子(麻生祐未)

「どうしたの?あんた」


亮司

「こんなバカ息子一人じゃ

浮かばれないかなぁと思って。

…風呂、入ってこようかな」



息子の様子に何かを感じる弥生子は、

亮司のポケットを探る。


ポケットの中には、

桐原亮司の名前の死亡届が入っていた。


『保存が困難なため水葬にしました』


と書かれている。


弥生子

「なんで…」


帆船の切り絵を見つめる。


そして、

家をそっと出ていこうとする亮司を、

弥生子が布団から呼び止める。


亮司に背を向けたまま、

弥生子が語りかける。



弥生子

「あんたさ、昔…

『海賊になる』って言ったこと覚えてる?

お父さんがさ、

『頼むから海賊はやめてくれ』って。

『せめて船乗りになってくれ』って。

そういう事でいいんだよね?

だから、

あんたが船に乗って死んだんだって、

そういう話でいいんだよね?」



亮司は、

泣いて震える弥生子の背中を見つめながら答える。


亮司

「うん、ありがとう。母さん」