●Ⅰ●幸せと不幸の始まり
それは8月8日夜8時に突然起こった。
ガタンッッ……
患者用出入り口の扉が開いた。人が入ってくる音でふと顔を上げた。入ってきたのは男の人だった。靴をスリッパに履き替えて受付へ向かって来ようとしたその時、バチッッっと目が合った。あたしとたいして歳が変わらなそうな男の子だった。もしかしたら一つや二つ年下かもしれない。年上とは思わなかった。
『こんばんわー』
…というと、彼は無言で保険証を受付に置いて待合室の椅子に座った。保険証の名前を見て、アポイント帳の名前を見て……
(初診の患者さんかぁ…新しくカルテ書かなきゃ)
反射的に保険証の生年月日に目が行った。産まれ年は違ったケド、あたしと同い年だった。
(社会保険の本人。…ちゃんと職に就いてるんだ。)
新しくカルテを書いて、保険証をコピーしなくちゃいけないのにどうしてだろう…。頭が真っ白で、手に力が入らなくて震える。心臓が動くのが早い。体は内側から燃えていくように熱く、汗がにじみ出してくるのがわかった。自分が何をしているのかわからなくなって間違って違う種類の用紙にカルテを書き始めていた。
『うっそ…。また最初から書き直さなきゃ……』
そこから書き直して、診療室に通すまでに約5分かかった。席に通してエプロンをかける時過剰なまでに動悸が激しくなった。心臓の音を聞かれてしまうかと思った。あたしが覚えてるのはここまで。診察に入ってからは頭が真っ白で何をしたか全く覚えていない。
『次回は明後日の8時でまたお待ちしてますね。お大事にどうぞ』
……次は明後日か。困った。本当はもう気付いてた。でも、認めたくなかった。あたしは彼に一目惚れした。でも、あたしには今月の3日に付き合って3ヶ月目に入ったばかりの彼氏…紘斗がいる。あたしは紘斗が好きだ。なのに、別の所へ気持ちを持っていかれ始めている。彼のすべてを知りたい。今日わかったのは生年月日と昂稀という名前だけ……。
ガタンッッ……
患者用出入り口の扉が開いた。人が入ってくる音でふと顔を上げた。入ってきたのは男の人だった。靴をスリッパに履き替えて受付へ向かって来ようとしたその時、バチッッっと目が合った。あたしとたいして歳が変わらなそうな男の子だった。もしかしたら一つや二つ年下かもしれない。年上とは思わなかった。
『こんばんわー』
…というと、彼は無言で保険証を受付に置いて待合室の椅子に座った。保険証の名前を見て、アポイント帳の名前を見て……
(初診の患者さんかぁ…新しくカルテ書かなきゃ)
反射的に保険証の生年月日に目が行った。産まれ年は違ったケド、あたしと同い年だった。
(社会保険の本人。…ちゃんと職に就いてるんだ。)
新しくカルテを書いて、保険証をコピーしなくちゃいけないのにどうしてだろう…。頭が真っ白で、手に力が入らなくて震える。心臓が動くのが早い。体は内側から燃えていくように熱く、汗がにじみ出してくるのがわかった。自分が何をしているのかわからなくなって間違って違う種類の用紙にカルテを書き始めていた。
『うっそ…。また最初から書き直さなきゃ……』
そこから書き直して、診療室に通すまでに約5分かかった。席に通してエプロンをかける時過剰なまでに動悸が激しくなった。心臓の音を聞かれてしまうかと思った。あたしが覚えてるのはここまで。診察に入ってからは頭が真っ白で何をしたか全く覚えていない。
『次回は明後日の8時でまたお待ちしてますね。お大事にどうぞ』
……次は明後日か。困った。本当はもう気付いてた。でも、認めたくなかった。あたしは彼に一目惚れした。でも、あたしには今月の3日に付き合って3ヶ月目に入ったばかりの彼氏…紘斗がいる。あたしは紘斗が好きだ。なのに、別の所へ気持ちを持っていかれ始めている。彼のすべてを知りたい。今日わかったのは生年月日と昂稀という名前だけ……。
●プロローグ●
昂ちゃん…昂ちゃんがいなくなってあたし、やっと気付いたんだ。昂ちゃんがどれだけあたしを想ってくれたか。あたしがどれだけ昂ちゃんを想っているか。
昂ちゃんはもう振り返ってくれないケド、あたしは昂ちゃんを想い続けたまま罪を償っていくからね…。何度死んで償おうと思っただろう。でも、見ててもらえなくても、たとえ許してもらえなくても、頑張って生きて、頑張って働いていればいつかは昂ちゃんの中で綺麗なままのあたしが残ってくれるんじゃないかって…思いたかったの。
※実話を元にしたストーリーですが、名前は実際の人物とは異なります。※
●愛華(あいか)…あたし。自由の森歯科医院の歯科助手。
●昂稀(こうき)…自由の森歯科医院の患者。一目惚れした相手。
●紘斗(ひろと)…彼氏。昂ちゃんと出逢ったあと何度も喧嘩別れをする。
昂ちゃんはもう振り返ってくれないケド、あたしは昂ちゃんを想い続けたまま罪を償っていくからね…。何度死んで償おうと思っただろう。でも、見ててもらえなくても、たとえ許してもらえなくても、頑張って生きて、頑張って働いていればいつかは昂ちゃんの中で綺麗なままのあたしが残ってくれるんじゃないかって…思いたかったの。
※実話を元にしたストーリーですが、名前は実際の人物とは異なります。※
●愛華(あいか)…あたし。自由の森歯科医院の歯科助手。
●昂稀(こうき)…自由の森歯科医院の患者。一目惚れした相手。
●紘斗(ひろと)…彼氏。昂ちゃんと出逢ったあと何度も喧嘩別れをする。
