≪ピーーーーー≫
「5月21日 15時59分、ご臨終です。」
手術室の全員が男性に合掌した。
死因はバスの下敷きになり内臓破裂。
ほぼ即死であった。
荒俣 甲斐
享年45歳
その前日
5月20日 16:00
「おいっ、あらまたーーっ!」
会社の上司が立ち上がってデスクから彼の姿を探している。
「は、は、はいっ。」
そこへ駆けつけた荒俣。
「大変なことになってるぞ、例の案件。」
上司は座ることなく荒俣を怒鳴る。
「例の?
いや、あれはプロジェクトチームの」
荒俣は資料を取りにデスクに向かおうとしたが
「プロジェクトチームのせいにするんじゃないっ、これはお前1人の責任だ。
わかったな。」
「ですから、」
「わかったな。」
「はい。」
その後、荒俣抜きでプロジェクトチームは会議室へ入って行った。
荒俣は自分のデスクで資料をめくってブスッとしている。
他の社員も横目で見るだけで声をかける者はいない。
引き出しを引くと保険屋からもらったイメージキャラクターの女優のクリアファイルがスマイルを見せる。
しかし、今日は彼を笑っているように見えた。
「死にてぇ。」
周りに聞こえない小声で 叫んだ。