お寺で手を合わせお辞儀をすると、向きを変えて石段を降りて行く男性。
下から登ってくる若い女性が会釈をしたが、目を反らしてそのまま降りて行く。
県道に出るとバス停まで歩く。
田舎のバス停は本数が少なく、まだ時間がたっぷりあった。
男性はバス会社の用意したパイプのベンチに腰をかけた。
グレーのスーツの内ポケットから白い封筒が頭を出した。
それをまたしまい直して、ジャケットの裾を引っ張った。
道向かいに商店を見つけた。
五百円玉で缶ビールを買った。
ベンチに戻り、それを開けた。
≪プシッ≫
口をつける。
平日の午後、快晴。
気温はそれほど高くないが、ジャケットを通る風が気持ち良い。
この男、それほど酒が好きでは無い。
酔うと眠くなるタイプだ。