17 煙の餌食 | クーカーの 笑説

クーカーの 笑説

コメディ小説を書いてます。

小説ほど難しくなく
コントほど面白くない
クーカーの笑説
1ページ1分くらいです。
サクサクと読んでくださいませ。

白煙は、みるみると濃くなり、やがて乗用車を、影形なく見えなくしてしまった。

ただの煙が、まるで生き物のようだ。

今、夢中に走ってきた男が、放置されたトラックのミラーに激突して転んでしまった。

それを白煙は音も無く這い寄り、男の体に覆い被さる。

男の顔を煙が撫でた。

「ぎひゃあ」
男は仰向けのままのけぞった。


その瞬間、この違和感が何かを悟った。

火事の煙なんかじゃない!!


男は、喉をかきむしりながら立ち上がると、千鳥足でバタバタと歩きだした。

俺はショウウィンドゥの裏側に移動して彼の様子を見ていたが、身体中が硬直した。

彼の見開いた目が、俺を見ていたからだ。

「たあすけ…」
彼は叫んだ。


明らかに俺に助けを求めている。

俺は、ハイビスカスの葉の裏に隠れてしまった。