タカと母親は小屋を去る。
アンデスはコロッケを抱えて頭を下げて見送った。
土手を越えて、母が言う。
「なんかイメージと違ったね。
全然臭くもないし。」
「小屋の中だって、すげー綺麗だったよ。
でっかい習字とか飾ってあって。」
タカは歩きながらコートに潜ろうとする。
「習字?
掛け軸かしら?」
「どっかで見たんだよなぁ。
何とか命(いのち)運転
て習字。」
「え。」
母は立ち止まった。
「何?
ママも知ってる?」
タカが見上げる。
「こうゆう字?」
携帯のメールに
尊命運転
と書いた。
「あー。それそれ。」
「本当に!
早く帰ろ。」
母は早歩きになった。
タカはコートに潜るのは諦めて母を追った。