《カツカツ》
《カチャカチャ》
目を開けたが星空以外は真っ暗だ。
「ううっ寒い。
俺は、寝ていたのか。ここは…」
展望台の駐車場に倒れていた。
《カチャカチャ》
指先に液体が触れた。
「冷たい。水?」
こぼれたコーヒーだった。
さらに固体に触る。
「コーヒーの缶だ。
これも冷たい。」
どれくらいここで横になっていたのか。
俺の体温はアスファルトに逃げた。
《カチャカチャカチャカチャ》
何の音だろう?
車の方だ。
ゴロリとうつ伏せになる。
ルームランプが点いた。
「あっ!」
何者かが車内を物色しているではないか。
声を出したことに後悔した。
人影はフロントガラス越しにこっちを見た。
俺はゆっくり、腹這いで後ずさりした。
車内の頭の輪郭が俺を目で追っているのがわかる。
人影は車から頭を抜き、立ってこちらを見る。
顔は見えないが凝視しているようだ。
人影はドアを強く閉め、ゆっくり歩いてくる。
強盗にやられる前に逃げよう。
辺りを見回す。
あの林へ逃げよう。
「ふ。ぅぅ?」
何だ!
寒さと恐怖で身体が動かない。