僕は パパがいない。
死んだからいない。
生きてるときも、あんまりいない。
いなくても8歳になれた。
ママのおかげ。
ママは、いつもいっしょ。
ご飯も、お風呂も。
野球の応援にも来てくれる。
僕が打つ時は
ガンバレー アッキ
と大きな声を出す。
秋彦だから、家ではアッキだけど
ちょっと恥ずかしい。
でも嬉しい。
守備のときは、グローブの隙間から見ると、他のママと話をしている。
だから、今日の試合の得点さえ知らない。
ママは、このおしゃべりが楽しいんだ。
うまくフライを捕ったときもナイス、アッキ!
は無い。
でもママが笑ってるからいい。
今日は負けた。
家に帰ると、パパの写真に
勝ったよ 負けたよ と言わなくちゃいけない。
今日は、負けたよ だ。
商店街をママと歩いて帰ってきた。
コロッケを2つ メンチを2つ買ってきた。
パパが好きなメンチを写真の前に置いて、負けたよって言った。
ママは、
アッキ それだけ?
だって。
だってただの写真だよ。