パソコンの画面を見つめたまま言われた。
手入れの件で怒っているのか。
そんなに画像が悪かったとは。
確かに先輩に会うためだけにテキトーな撮影だったのは認めるけど。
「ウォッチング仲間のぢぇふさんにあげたほうが双眼鏡が喜ぶし。」
「すみません。怒ってますよね」
「お前さぁ。
目の前で人が溺れてても撮影をとるのか?
人間観察が好きなのは知ってたけど。」
「え?」
「だからお前は…
あー。
お前には、双眼鏡を渡すのは…あれだよなぁ。」
先輩が
お前は
の続きを飲み込んだ。
そのあとの言い訳が不自然すぎる。
続きは、自分でわかった。
「…はぃ。すみません。」
「いや。ゴメン。
偶然こんな時、
お前なら、すぐ助けると思ったから。」
「…先輩。」
いきさつを説明できないけど
一瞬溺れた酒井を笑った私にショックだったようだ。
確かに
これじゃ、
これじゃ、奴らと同じだ!
私は、先輩に頭を下げて病室を出ることにした。
「バツとして…
明日また、はぎ沼を撮影して来い」
先輩はボソボソと言った。
「はい。失礼します。」
私は、自分を責めながら帰宅する。
酒井の白いパーカーを思い出した。
今の私を絞れば、あの汚い水がしみ出るだろうな。