ベッドの上
大の字で寝る男
明石 泰蔵である。
(あかしたいぞう)
「もう、だめだ。
俺には、無理だ。」
寝言のようだ。
≪ドタン≫
ベッドから落ちる明石。
さっきまで溺れる夢を見ていた。
「うぅ。…夢か。」
起き上がり、サイドテーブルの水を一杯飲んで落ち着きを取り戻す。
ここは、客船モーゼ号の客室の中。
《ドゴォォオ》
突然、轟音と衝撃。
船が揺れ、サイドテーブルが吹っ飛んだ。
「おおっ、なにごとだ!」
明石は廊下に飛び出した。
『きゃーー』
『助けてぇ』
悲鳴を上げ、廊下を通り過ぎる人々。
明石は正義感が強く、海上自衛隊に入隊していた。
海上での救助に出場したが、失敗し自分が助けられることに。
彼は、そのショックで除隊した。
今、彼は故郷に帰る船にいた。