少女は初めて見るであろう、そんな景色に疲れなど忘れてしまったようだった。
笑顔ではしゃいでいた。
「ありがとう!この街にこんな所があるなんて知らなかった」
少年も少女のそんな姿を見て、笑顔になったが、その顔は直ぐに違う表情に変わる。
今この少年がしている表情。
それは、間違いなくこの歳の子供には似合わなく、ましては、目の前で楽しそうにしている友達のそばではもっとも似合わない顔であろう。
「あのね、聞いてほしい話しがあるんだ」
少年の自分との明らかに違う温度差に幼いながらも気付いたのだろう。
少女は不思議そうな顔をしながら少年の話しに耳を傾ける。
「実は僕ね、引っ越すことになったんだ」
少年は少女の顔をまともに見れないのか、したを向いたまま語りだした。
少年の突然の告白に少女は動揺しながら、落ち着きのない声で少年に語りかける。
「どこに行っちゃうの?もし私でも行ける距離なら、毎日会いに行くよ!ううん。そうじゃなくても行く!」
少女の健気な想い。少年にはどう届いたのだろう。
「無理だよ…。電車を使っても凄く時間が掛かるんだ。毎日なんてこれるわけないよ。」
少年もきっと、出来ることなら毎日でも会いたいのだろう。
しかしこの二人はまだまだ子供である。この年でそんな遠い所に行くなど無理であった。
「そう…なんだ」
少女は先程までの笑顔から一転、泣き顔になっていた。
「いつ、行くの?」
今にも涙が出そうな顔だった。少女は少年と同じように下を向いて必死に涙を堪えていた。
「一週間後」
少年は聞かれた答えだけを口にしていた。他に言葉が出ないのであろう。
唇を一文字に結び、少年の返事を待っていた。
「そっか…。じゃあ見送りに行くね」
今の少女に出来る精一杯の返事であった。その言葉に少年は「うん」とだけ返してようやく顔を上げた。
少年が顔を上げたと同時に少女も顔を上げる。
そしてある提案を少年にした。
「最後は、二人とも笑顔でいよう。思い出が悲しくなるなんて嫌だよ」
少年はその提案に頷いた。言葉に出さずとも、自分と同じ気持ちでいてくれるとわかっているのであろう。