その年はまだ4月下旬なのにとても暑かった。

 

「もう、美術館とか博物館とか歴史的建造物とか行くのは嫌だ!」とぼくは悲鳴を上げた。

 

前日のクノッソス宮殿遺跡めぐりなんか、屋外の壁画は多分複製でそれもちゃちでいかにもわざとらしくって、そんなものをその熱さの中見て歩くのは地獄だった。

 

それで海に行った。

 

 

もういい大人なのについはしゃいでしまって、それはそれで疲労した。

でも、アテネに戻る船の中で寝ればいいかなと考えていた。

ところが、クルーザー内の一般人客室で一晩中大音量でスピーカーから放出されるミサ。

眠れぬ夜を過ごした。

 

そう、それは復活祭。

キリストが処刑されてから3日後に生還する奇跡を祝った信者教徒においては最も重要な祭典らしいと聞いたことがある。

 

ギリシャはギリシャ正教の国であった。ここに来て復活祭の期日が宗派によって違うということを身をもって知った。