「物価はなぜ上がるのだろう?」と妻に素朴な疑問をぶつけてみた。

 

彼女はぼくを軽蔑するようなまなざしで、

「求める物に供給が追いつかないとき物価は上がるのよ。」と言う答えであった。

 

「えっ、それって詰まり去年より今年の方がみかんやオレンジ食べたがっている人が多いって事? 年々みかんやオレンジを食べたがる人口がふえているって事?」とぼく。

 

「はあ?、みかん?、オレンジ?」

 

「いや、だって、ようやく、みかんやオレンジのおいしい季節になって値段をみたら、ヤバいくらい上がってて、去年の倍だぞ。 ぼくの記憶している数年前の4倍だよ。」とぼく。

 

「そりゃ、ガソリンの高騰でしょ。運送費が上がっているせいでしょ。」と妻。

 

「じゃあ、それでいいけど、りんごもジャガイモもナスもピーマンもニンジンもネギもキャベツもサラダ菜も、全部近所で採れる物が上がっているし、野菜や果物が上がると肉や魚も上がるし卵も上がるし、小麦粉も上がるし、米も上がる。菜種油も上がりひまわり油も上がり、『風が吹くと桶屋が儲かる』 的なのは、なんか納得できないな。」とぼく。

 

「なにそれ、落語? あーもう面倒くさい! イライラする。」と妻。「男なら、四の五の言ってないで物価が上がっても動じないくらい稼ぎなさいよ。失業してもう3年半経つでしょ。いい加減働いたら!」と怒りの矛先がぼくに向けられ始めたので、休憩を切り上げ居間から退散して、薪積みに戻った。

 

ひと月前注文した薪がようやく昨日届いた。それで、今朝から薪積みに専念していた。

 

闇業者だろう、昨年の1,5倍の価格であった。薪の質もだいぶ落ちていた。まだ積み終わっていないので正確な量はわからないけど、多分注文した量よりは少ない。なんだか泣きたくなってきた。

雨が落ちてきた。もう泣いた。雨なので泣いていても誰も気付かない。

泣きながら、記憶を蘇る旋律が湧き出してきて、歌った。

  • このー木なんの木 、気になる木、
  • キになるキになるキですから。
  • 名前も知らーないー、木ィーなのでしょう。
 
  • このー木なんの木 気になる木、
  • 見たこともーない 木ですから、
  • 見たこともーないー花が咲いたでしょう。

 

日立のコマーシャルソングで小林亜星さんの作曲だったと思う。(多分歌詞まちがえていると思う。)