ぼくは出身が東京なので幼い頃より染みついた「冬」の感覚を言えば、冬とは12月中旬から3月初旬までである。3か月間弱と言った所である。
 しばらく信濃の山奥で暮らしたことがあったから、それでもせいぜい12月初旬から3月下旬の4か月間弱が本来ぼくの持つ冬の感覚であった。

 ところが、フランスに住み始めてと言うか、フランスの今住むこの田舎に越してきてからの冬の意識はガラッと変わった。

 

 10月中旬から5月中旬までが冬だ。

 近頃は温暖化の所為もあって多少短くなったかもしれないけど、それでも一年の半分は冬である。

 

 もう、人生の 2/3 はこの地に住んでいるのだから、慣れてもよさそうなものだけど、こればかりはなかなか難しい。
 食事にしたってそうなのだけど、やはり幼いころに刷り込まれるように慣れ浸しんだ食事が本質である。

 なので、御馳走と言えば「天丼」「かつ丼」「鰻丼」「握り寿司」であって、xxx、xxx、xxx、xxx ( 聞かされてもちょっとよく分からない) とか出されても、いや出されればそりゃ嬉しくて、美味しく頂くのだけど、やはり家に戻って口直しに「蕎麦」なんかを食いたくなる。

 ああ、蕎麦が食いたい、稲荷寿司が食いたい、カレーパンが食いたい。毎日肉なんか食いたくない、

 で、「冬」に話を戻すと、長い冬に突入した。

 そりゃそうで、地図で確認するとパリは北緯で言うとかなり北に位置している。ぼくの住む田舎は更に北に40キロほどある。日本で言えば北海道宗谷岬よりさらに北にある。それでも、「メキシコ湾暖流の北上によりヨーロッパ大陸は温められている。」と中学の時習ったことが今、知識の上では実感できるが、

 

 そんなことは、どうでもいい。この位置でこの暖かさは幸運だと言われても、やはり寒いものは寒い。

 週末娘が戻って来た。部屋が寒いと可哀そうなので薪ストーブをガンガン焚いた。室温は20℃を保っていた。外は余ほど寒いのだろう。鎧戸を閉めても窓ガラスに露が付く。

 朝目が覚めると、窓ガラスに指でなぞった落書きを見付けた。

 

 「いつまでたっても子供だな。」

 

 そう思う気持ちは親でいる限りはずっと続くのかも知れないな。