野良猫やら他所の飼い猫が我が家の庭や屋内を徘徊している。
彼らの名は各家庭で好き好きに呼ばれる。
例えば野良猫で白と黒のノラクロ系の猫をぼくは「ハナクソ」と呼んでいる。何故ならばその猫の鼻の脇に黒い斑点があるからである。幾らなんでもそれは酷いと妻や娘は「フェリックス」と呼ぶ。それは、猫の餌のメーカーで用いられているキャラクターと同じ模様という安易さである。が、隣家では「ミネルバ」と呼ばれているらしい。そんな大層な名前をつけられるほどのものではない、たかが猫である。
その他にも毛の長いペルシャ猫系の顔のつぶれた猫を「チンクシャ」。たまに来るこそこそとした態度の「ヨソモン」。尾の先端が膨れ上がって蛇みたいなのを「ガラガラ」などと多様である。
皆うちの餌さを食いに来る。なので、騒動が絶えない。
大体夜半寝静まったときに来て、我が家の猫と食事時間が鉢合わせになると、台所で取っ組み合いの大喧嘩が始まる。
弱虫の癖に気の荒いうちの猫は些細なことでも大声を張り上げる。人から触られるのを極度に嫌う。そんな気難しい猫にも珍しく仲が良い友達がいたようだ。名を「トモ君」とした。茶色の薄い虎縞のある猫である。
飼った積もりはないのだけど、いつの間にか飼われ猫の雰囲気で人間様の寝床に、我が家の猫同様スヤスヤと寝入っている。
彼らはたかが猫である。
悩みはまだない。あるとすればいかに食料にありつくか、居心地のいい寝床を見付けるか、の2点につきる。
まあ、我々人間とそう大差はないかもしれない。