mayuの感染経路がほぼ断定された。近代ウイルス学血液臓器センターの火災に関わった佐藤吉国の一家が最初のキャリアではないか。家族の行動範囲の先々で悲劇が起こっているのがその証拠となった。最初に感染した佐藤久美を手の内に収めているというのは、心強かった。がしかし、そのウイルスが持つ力がどんなものか学者も警察も知らないのである。そしてそれを知りたいという興味は関係者の8割が考えていることだった。それと同時になぜ、佐藤久美とともにいた三石祐太両名が今まで無事生きていたことを何度も討論し、いままでの感染者との違いを発見することが、この人類の進化につながりそうだという意見に傾いていた。要するに、佐藤久美はモルモットのように毎日、実験台のごとく病室から一歩も出られないがんじがらめの環境に置かれているのであった。それはまるで、火災現場からやってきた少女と同じような環境だった。佐藤久美と繭が同一化するのに条件はそろってしまった。佐藤久美は繭と話すことはなくなった。繭の記憶が佐藤の中に流れ込み、自分を繭本人だと思い込んだせいだ。
「佐藤さん、祐太君の居場所がわかりませんか?その能力があれば見つけられるのではありませんか?」
日に何度もあるこのような警察の問いかけにも、
「実験は途中だった。わたしにまだ何かしようとあの人たちは考えていた。他の子たちが死んで行くのを見ていました。わたしだけが生き残ったのがあの人たちは不思議だったみたい」
昔の記憶の断片を話す。
「あの病院にはまだ、扉の向こうがある。そこにすべてのデータが保存されている」
警察はこの言葉を確かめるために、無残な廃墟となった近代ウイルス学血液臓器センターに足を運んだ。が、どこを探してもそれは見つからなかった。
「わたしをその場所へ連れて行って」
収穫がない警察は、学者たちに佐藤久美を連れたいと言ったが、学者たちは新たな感染者が出るのを恐れ承諾しなかった。
祐太への捜査の手も近づいていた。
「光林寺さん、本当に彼は現れますかね」
「あの子は東京に知り合いはいない。青山の御曹司のところにも戻れない今、どうしているか。早く無事な姿を見たいんだ。あの子もその思いは同じだろう…。お願いしますよ、刑事さん、はやくあの子を見つけてやってください」
(夏江・・・頼む、あいつを連れて行かないでくれ。どうか守ってほしいんだ…。)
光林寺の手に携帯ストラップが握られていた。
「それは?」
刑事の一人が、それに気づき質問したが、
「俺のお守りみたいなもんさ」
夏江にもらったものだ。クローゼットの奥に突っ込んでいたはずのそれが、祐太の手掛かりを探すために手を突っ込むと足元に躍り出たのだった。そのタイミングは絶妙で、魂がこもっているようなそんな気がしたのだ。
(夏江、祐太に会わせてくれ。頼む…)
kick into action

