カズさんの書いた企てを毎日読んでる。

破って燃やしてやろうかとも思う。

でも出来ずに、毎日読んでる。

カズさんに対してこんな感情を

持つ日が来るなんて思いもしなかったよ。


ワタシの事が心配だったのでしょ?

その一心だったのでしょ?

分かっています。


カズさんは分かっていなかったよ。

あの人とワタシに

2人で話す時間があればなんて

簡単な話ではなかったんだよ。


あれからね、ワタシは"浮気相手"として

2年過ごして、そして。

朝が目が覚める度に後悔して

後悔で眠れない夜を過ごすような

堕胎の決断をワタシはしてしまいました。


消えようとしていたら

「彼女と結婚する」と堕胎の後に去ったあの人が現れました。

二人で見たい景色があるとか

今までは予定とか教えないようにしてたとか

どうでもいい訳の分からない話をしてた。


「これからはいつ電話くれてもいいから。」


人に話したら笑われてしまうような

この一言をワタシは拒めませんでした。


子供を殺したのにあの人と"一緒にいる事"を

選ぶのは簡単じゃなかったよ。

嬉しいとか楽しいとかそういう時間を選ぼうとする自分を許せなかったし

沢山の呪いの言葉も聞いてきたし

名前を考えると云ってくれて

安産のお守りを買ってくれて

そして沈黙して「彼女と結婚する」と去った

あの人を信じる自分に戻ることは

簡単じゃなかったけど拒めなかった。


一緒に居るようになっても

彼女が写った写真はコルクボードに

貼られたままだったし。

初めての遠出先は

彼女と行って楽しかった場所だったし。

名前を呼び間違えられたり

間違ってメールが届いたこともあった。

それでも二人なりの時間を重ねていると

ワタシは思っていました。


一緒に暮らそうと云ってくれた後には

また沈黙が待っていた。

「彼女を幸せにしたかった?」

ワタシの問いに遠慮なく「うん。」と答え

「彼女とは音楽の趣味も同じで

唯一無二だったんだ。」と切なげに

べらべらしゃべるあの人にとって

ワタシは何者なのか分からなくなって

一緒に居たいのはワタシではないのだろうと

離れました。


それでも。街の中で偶然会ったあの人が

人目を気にせず手を繋いでくれて。

単純なワタシは嬉しくて戻って。


双子の誕生日になる日だった日を

一緒に過ごせなくて。

ワタシは少しの不安を払いたくて

あの指輪を首に掛けました。

後で思えば、あの時には着床していて

ホルモンのバランスが変わって

ワタシは不安に感じたのだろうと思うけど。

ワタシの首にある指輪をあの人が

どんな風に見て「外して」と云ったのかなんて

少しも思いが至らなかったんです。


そして妊娠を知りました。

あの人の沈黙の壁の前で

「彼女を幸せにしたかった」と話したあの人を

思い出してしまいました。

沈黙のきっかけを自分が作っていた事に

気が付かず、見当違いの不安に怯えていました。


愛ちゃんの事や父親の病気がありました。

気がおかしくなりそうでした。

あの人の拒絶と沈黙の壁の前で

二人で子供を迎えたい思いを捨てきれず

このまま黙って一人で産み育てる決断も

出来ないまま流産しました。


今日はここまで。

息が苦しい。