20代の頃。
行っていた治療がいい加減だった事を知り
仕事で事故が続いたり
家族の病気が悪化したり。
色々重なっていた時期。
カズさんと出掛けた神社で
ある指輪に出会いました。
しめ縄を型どった指輪。
最初に興味を持ったのは
鎖骨にしめ縄の刺青をしていたカズさん。
話を聞いたら厄除けの指輪だと
教えてくれました。
ワタシと波長をチューニングしてくれると
云われ購入しました。
神頼みの心境だったのかもしれません。

心がざわざわする時や
元気に過ごせない時につけていました。
効果覿面とは云えなくても
少しココロを落ち着かせたりするのには
十分でした。

双子の誕生日になる日だった11月7日。
流産してから一人で
川に花を二輪流しに行っていました。
あの人に「一緒にいて欲しい」と
頼んだ事もあったけど
「意味がない」と云われて。

二人で居るようになった年の
11月7日も一人で川に行きました。
二回目の11月7日。
産まれてこなかったけど
今はあの時居なかったあの人が隣にいるから
悲しいとかごめんねだけじゃなく
二人で誕生日ケーキでも食べれたらなって
ケーキを買って帰りました。
「何してるの?」ってメールしたら
「疲れたから寝るところ」と返信が来て。
それだけの事なのに
「意味がない」と云われたわけでもないのに
ワタシは少し不安になってしまって。

指輪をネックレスに通して首にかけて
深呼吸して月を眺めながら
ケーキを食べました。
少しだけ欠けた月でした。

ワタシはいつでも自分の事ばかり
考えていたのだと思います。
だから、数日後に会ったあの人が
ワタシの首にある指輪を見て
「外して」と
云った意味を分からずにいました。

指輪の事は話していたつもりだから
ワタシが不安になってる事で
暗い気持ちにさせたかなと
そんな風に考えてました。

あの人を暗い気持ちに
させたいわけじゃなかったから
次の日には外したけど。
外したワタシを
あの人が見る事はありませんでした。

あの人が「外して」と云った日を境に
ワタシを避けるようになっても
まだワタシは理由が分からずにいました。
とても的外れな理由をひっぱりだして
また繰り返しになるんじゃないかと
不安に怯えてました。

なぜ?なんで?と
答えが見付けられず
どうしようもなく流れてく時間の中で
妊娠を知りました。

11月7日のあの夜に
指輪を着けたのはこういう事だったのかと
ワタシは思いました。

あの頃は呪いの指輪だなとか
あの日不安に思った気持ちを
伝えればよかったのかとか
口にしてお互い確め合えばよかったのかとか
思ったりしたけど
それは違うと今は分かる。

指輪はただのきっかけで。
確め合おうとしなかった。
確め合うより離れる事を選んだ。
一緒に居ることより別れを選んだ。
それだけ。

しめ縄の結界は崩れた。
それだけ。


毎年この時期になると思い出しちゃうな。
不毛な時間。