堕胎の後は後悔と罪悪感で

生きてる事が苦痛でしかなかった。


仕事中にフラッシュバックが起きたり

涙が止まらなくなったり過呼吸が起きたり。

夜は眠れなくなった。


こんな情けないワタシでは

子供の命の意味がなくなってしまうと

分かっていても考えても

子供を殺してまでも生き残る意味や価値は

ワタシにはないから。

自分が楽になるためにこれからも

後付けのいいわけがましい意味を

考えていくのかと

自分に本当に嫌気がさして疲れてしまった。


今ワタシが消えたら

あの人はココロを痛めるかなと

少し頭を過ったけど。

ワタシではない人との時間を選んだあの人が

ワタシに望む事は

堕胎と堕胎の事実を持って

目の前からワタシが去る事だろうから

それが叶った今

ワタシが存在しようと消えようと

何も変わりはないだろうと。

それよりあの人の事を考えるコトが

なくなった。



堕胎の一週間前に亡くなった祖父の納骨が

終わったら消えようと考えた。


何もかもどうでもよかった。

何もかも。


そう思って過ごしていた夏の始まりに

あの人が目の前に現れた。

何を云ってるのか分からない事を

あの人は話してた。

ワタシは消えると決めていたし

あの人が迷う度に戻る度、離れる度

もう沢山だと消耗していって

堕胎の後、去っていったあの人の言葉なんて

どうでもよかった。

だから、あの人の話は頭に入ってこなかった。


なのに。

「これからはいつ電話くれてもいいから」

そのたった一言に

ワタシは混乱して足元から揺れた。


なんで今なの?

なんで今さら云うの?

なんで堕胎の前に云ってくれなかったの?


色々ありすぎたあの人とワタシが

始めるにはあまりに頼りない

人に話したら笑われてしまうような

たった一言を

「あの時」のワタシには

拒むことが出来ませんでした。



「今の」ワタシなら分かるのに。

終わりのはじまりのたった一言。

一緒に子供の命の意味を考えたい

いつか戻ってこれるように一緒にいたい

一人では抱えきれない思いを

二人で乗り越えていけたらと望むのは

あまりに的外れで欲張り過ぎたことだと。

「今の」ワタシなら分かるのに。