今日、昔よく通った場所に仕事で来た。

大好きだった場所。


高校生の頃から幾度となく通って。

石段に腰かけて鳥の声を聴いたり

風が吹くのをひたすら待ったり

本を読んだり、絵を描いたり

高く伸びた杉の木の隙間から空を覗いたり

木漏れ日に手をかざしたり

落ち葉拾ったり

色々なことを考えたり

なんにも考えなかったり。


大好きだった場所。


一年に3日間だけ

笹飾りをライトアップする日があって。

竹筒のロウソクに火が灯り

大好きな場所の一番好きだった時間。


一度だけあの人と来た。


何度目かの終わりの後

約束して会った事がなかったから

最後に約束して出掛けたいと

サッカー中継見たいからと渋るあの人に

お願いして一緒に来てもらった。


ワタシの大好きな場所に

あの人と「じゃあ明日」って

約束して来たかったから。


気に入ってくれた様子のあの人に

嬉しい気持ちと

この先二人で来ることはないから

四重奏の音が余計に染み込んで

切ない気持ちと。


ワタシは二人だけの思い出の場所が

欲しかったからと

「彼女と来ないでね。

誰とも来ないでね。」

この時間を忘れてしまうだろうあの人に

無駄な悪あがきのお願いをした。


あの人は「うん。」と答えてくれたけど

忘れてしまっただろうな。


叶わない約束なんてよくあることだけど

忘れてしまったとしても。

誰ともあの日と同じ夜に来て欲しくないな。

と、ここに来ると

子供染みたお願いをしたあの日のワタシが

こちらを覗きます。

思い出さなくていいから

ここは上書きされずにあって欲しかった。




久しぶりに撮ったけど

やっぱり構えると手が震えちゃうね。





あの夜撮った景色をカードから抜いてみた。

色褪せて見える?

色はつけなければ色褪せない。