「明日電話する」
初めての約束だったけど
掛かってはこなかった。

「俺やっぱり戻るわ」
病院のベッドの上で聞きました。

「手紙を渡した」
カズさんの呼吸器を外した夜でした。

一緒に居て欲しい

子供達の誕生日を一緒に過ごして欲しい

と伝えたワタシへの答えは

「一緒に居れない。意味がない。」


「手紙を渡したコト後悔している。

消えたい。」


「ワタシと居ると強くなれない。」

「カズさんの最後の画を持ってる」

渡してくれると云った夜は

彼女と一緒でした。


「手紙を渡した。

もう一緒に居る感じじゃない。」

でも数日後には
「旅行に行って来たんだ」って。
「タッチの差で間に合わなかった」
「間に合う時間はなかった」

「ワタシには耐えられない時間しか

待っていない」


「落ち着かない。

ここは俺の居る場所じゃない」


「一緒に居れないって決めたから」

「彼女と別れたら、耐えられない」

「まだ間に合う?」の次には

「どうかしてたんだ」


「ワタシが俺を信じられないなら

なにをどうしたってだめだろうね」

「ワタシと居ると

俺が居ない方がいいのかって淋しくなる」


寝言の「ただいま」をあと何回聞けば
この人と一緒に居れるのか考えてました。

「産んで欲しい」の後の
長い長い長い沈黙。




消化出来なくても
受けとめられなくても
それでも
一緒に居たくて
飲み込んで越えてきた
呪文

呼ぶに相応しい
繰り返した言葉。

終わってしまった後の残骸には
呪文が
ばらばらと
転がっていました。

最後の呪文は
ワタシに止めを刺すには十分でした。

もう呪文は唱えない。
必要がないし
意味がない。

そうか
ワタシが云われちゃう言葉
「意味がない」
って
こういう時に使うんだ。