カズさんと公園で出会ってから特に約束はせずに

夜中、公園で会ったら お話をする。こんな感じで数ヶ月。


ワタシが公園に行くといつもカズさんは居ました。


ワタシを待っているのは分かっていました。


当時ワタシの仕事は休みも無ければ、何日も徹夜なんてザラだったし

突然出張も日常で、帰りも当然真夜中でした。


毎日 公園に行ける訳ではなかったから

待たせているなら、はっきり云わなくてはと決めて公園へ。

色々シュミレーションしてみたんです。

待っているわけではありませんってことも十分にある。

ワタシが自意識過剰なのかも・・。

でも、待っていて風邪でもひかせたら大変だし・・。

行ったり来たりしながら意を決して公園へ。



話をしたワタシにカズさんはあっさりと

「待っているわけではありません」


「・・・・・・・・。」

(やっぱりそうですか・・。)



「あなたに会いに公園に来ているんです」



ワタシは多分耳まで真っ赤になっていたと思う。



カズさんは素敵な人。それは間違いなくワタシのココロにあった事。

惹かれている自分も分かる。

でも、ワタシは流産付きの別れから抜け出せないでいたし

正直男の人と付き合うのは考えられない。



出来るだけ丁寧にカズさんにそのことを話した。



「俺があなたに会いに公園に来るのは俺の自由です。

 それが迷惑でイヤだというのなら、あなたが来なければいい」

「流産した事は知っています。それでもいいと言うつもりもありません。

 傷つく事を云いますが、そんな事はどうでもいいんです。

 俺の気持ちに影を落とすようなことではありませんから。」

「知らないくせに俺の気持ちを決め付けて 結果を突きつけないで下さい」



返す言葉が見つかりませんでした。



「約束なしでこの公園で会える。それを大切にしているつもりです。

俺はあなたに会いに。あなたも俺に会いに。

そんな気持ちが自然に重なった時間を大切にしているつもりです。

その先は その時がきたら考えればいいと俺は思っています。」



敵わないなと思いました。

先走って、バカみたいだなって反省しました。

カズさんは大人だ。浮き足立って見失ったりしない。

ゆっくりと始めてもいいんだ。



「では お言葉に甘えて。カズさんに会いたくなったら公園に来ます」




「いつですか?」



・・・・はい?



「明日は来てくれますか?」



「・・・・・・・・・多分・・・来れると思います」



「じゃあ 明日10時にここで会いましょう」



「・・・・・はい」

(・・・・アレ?・・・・・ん?)



偶然は・・?自然と・・・?その先はその時・・・?



帰り際、カズさんがくしゃくしゃになった封筒をワタシに渡した。


「ずっと渡せなくて」

少し照れた風のカズさん。



ラブレターでも入っているのかな・・。

家へ帰って、封筒を開ける。


中からカードキーが。

添えられた便箋には

カズさんの住所とFAX番号と地図。

そして


「いつでも引越してきてOKです。家電製品は全て完備してます。

 洗濯機の調子が少し悪いです。持ってこれますか?」



・・・・・ん?


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?


プロポーズっぽくワタシ 受け取ってしまいましたが・・・。

偶然は・・?自然と・・・?

その先はその時・・・?


もう、その時なのか?



いやいやダメダメ。

カードキー返さなくっちゃ。

・・・と地図を片手に自転車吹っ飛ばしてカズさんのマンションへ。



ピンポーン。



「やっぱりね~。来ると思ったんです。いらっしゃ~い」



はい?



「もう大人ですから、いつまでも公園ベンチデートでもないでしょう?

普通に誘ってもこないと思ったので。あれは俺の部屋への招待状です。」


「さあ、上がって下さい。どうして そんな顔してるか聞かせて下さい。」



ワタシはどんな顔していたんだろうか?

顔の全ての筋肉が伸びきってしまった顔してたかも・・。



カズさんには敵わない。



「ようこそ~」って上機嫌なカズさん。



罠でした。



告白はモジモジしながらしちゃうもの のワタシの定義をぶち壊した

荒手の告白。そして罠。




この後、こんな罠にワタシは何度も引っかかるのです。








ドコデスカ?