初心者さんのお金のジョーシキ 知らないと損する「お金のキホン」
お金のキホン 年金を早くもらう? 遅くもらう?
年金受給時期、早めと遅めそれぞれのメリットデメリット
2015.06.29
 
そもそも年金はいつからもらえる?
 
わかっているようで実はあまりわかっていない、という人が多い公的年金。その理由のひとつには、仕組みのややこしさが挙げられます。日本の公的年金制度は2階建てになっており、1階のベース部分は20歳以上の国民が皆入っている国民年金(基礎年金)。2階部分は働き方によって異なります。簡単にいうと、2階部分は会社員なら厚生年金、公務員の場合は共済年金(今年の10月から厚生年金に統一予定)という具合。また、アルバイトや派遣社員などのいわゆる非正規社員の人も要件を満たせば厚生年金に加入できるなど、人それぞれに加入する年金の種類が異なります。
 
ややこしいのはそればかりではありません。ある一定の年齢になって受給する年金を老齢年金といい、1階部分を老齢基礎年金、2階部分を老齢厚生年金と呼びます。何歳になるとそれらの老齢年金が支払われるのか、これも制度をややこしくしている要因です。
 
老齢基礎年金、老齢厚生年金とも受け取ることができるのは65歳からです。しかしながら、2階部分の年金に関してはそうとも言い切れません。というのも、これまでに年金の改正を経てきたために「特別措置」が設けられているのです。そもそもこの2階部分の老齢厚生年金は60歳から受給できるものでした。年金改正で65歳から支給ということに変わったものの、いきなり65歳に変えるのではなく、当分の間は、65歳になるまで「特別支給の老齢厚生年金」を支給することになりました。その受給開始年齢は3年ごとに1歳ずつ段階的に引きあがる仕組みです。「特別支給の老齢厚生年金」はさらに「定額部分」と「報酬比例部分」の2つに分かれ、受給開始年齢もそれぞれ異なります。
 
わたしたち現役世代の女性で見てみると、「特別支給の老齢厚生年金」をもらえるのは昭和41年4月1日以前に生まれた人。そのうち、定額部分と報酬比例部分ともにもらえるのは昭和29年4月1日以前に生まれた人です。昭和29年4月2日~昭和41年4月1日までに生まれた人は、報酬比例部分のみとなります。開始年齢は生年月日により、60歳、61歳、62歳、63歳、64歳とさまざま。これらの人が65歳になると、「特別支給の老齢厚生年金」は停止され、老齢基礎年金と本来の老齢厚生年金の両方を受け取るようになります。昭和41年4月2日以降に生まれた人は、「特別支給の老齢厚生年金」はなく、65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を受け取るという仕組みです。
 
ただし、特別支給の老齢厚生年金も本来の老齢厚生年金も、厚生年金の加入期間が1年以上、かつ国民年金の保険料納付期間と保険料免除期間の合計が25年以上(※)など、厚生年金の受給資格を満たすことが必要です。
※平成24年8月の国民年金法の改正により、平成27年10月1日より「10年」以上に変更予定
 
年金を早くもらいたい場合の「繰上げ」とは >>
 
年金を早くもらいたい場合の「繰上げ」とは
 
早くリタイアして、早く年金をもらいたい。誰もが願っていることでしょう。本来は61~65歳になってからもらえるはずの年金ですが、早めに年金を受けたい場合には、60歳になっていれば支給開始年齢に到達していなくても「繰上げ請求」できる制度があります。
 
繰上げ制度の仕組みを見る前に、公的年金は一生涯にわたって受け取れる終身年金であることを思い出してください。平均余命が同じなら、早くもらう=受け取る期間が長くなりますね。本来65歳からもらえるはずの金額を早くからもらう (長くも
らう) ということは、トータルでみると年金受給額が多くなるのは簡単に想像できるでしょう。そんな美味しい話なら誰もがそうするはずで、それなら65歳からという決まりは崩れてしまいます。
 
つまり、本来の開始年齢からもらう人との公平性を保つため、繰上げ請求する場合、各回の年金額は減額して支給されるようになります。減額率は繰上げ1カ月につき0.5%。1カ月単位で繰上げすることが可能です。例えば65歳ではなく60歳から受給したい場合、12カ月×5年=60カ月の繰上げとなり、60カ月×0.5%=30%の減額となります。仮に老齢基礎年金を65歳から満額もらえるはずの人が、60歳からもらおうとすると、780,100円(平成27年度現在)×70%=546,070円になってしまうのです。
 
ところで年金は2階建てでした。国民年金にしか加入してたことのない人はこれだけの計算で完了ですが、老齢厚生年金の受給資格がある人はどうなるのでしょうか。厚生年金に加入していた人が繰上げ請求をしたい場合、老齢厚生年金と老齢基礎年金が同時に繰上げされるようになります。減額率は基礎年金と同じく、1カ月繰り上げるごとに0.5%。例えば、本来61歳からの「特別支給の老齢厚生年金」を60歳から受給したい場合、厚生年金部分は12カ月の繰上げとなり6%の減額、基礎年金部分は60カ月(5年分)の繰上げとなり30%の減額になるという具合です。
 
早く年金をもらえることはメリットですが、年金額が減額されてしまうのは大きなデメリットでしょう。しかも繰上げ請求すると、一生涯減額されたまま支給されることには注意が必要です。65歳になっても元の金額に戻ることはありませんし、そのほかにもいくつかのデメリットがあることを忘れてはいけません。
 
もしも65歳までに本人や配偶者にトラブルが発生したとき、本来得られるはずの権利を失うことになってしまうのです。障害基礎年金を受け取ることができない・寡婦年金の受給権を失う・配偶者が死亡したとき、遺族厚生年金との併給はできないなど……。これらは自分や配偶者に障害や死亡があったときの年金なので、受給がないに越したことはありません。しかし、万が一という場合に、本来もらえるはずの権利が失われてしまうと、その後の生活にも大きな影響を及ぼしそうです。
 
年金の繰下げ受給とは(しくみ、要件、メリット・デメリット) >>
年金の繰下げ受給とは(しくみ、要件、メリット・デメリット)
 
繰上げとは逆に、65歳で老齢年金を受け取らずに、66歳以降70歳までの希望するときから年金を受け取ることも可能です。繰上げとは逆に、繰下げ請求をした年金額は、本来の65歳で受け取る金額よりも年金額が増額されて支給されます。増額率は1カ月繰下げるごとに0.7%。例えば65歳ではなく70歳から受給する場合、12カ月×5年=60カ月の繰下げとなり、60カ月×0.7%=42%の増額となります。仮に老齢基礎年金を65歳から満額もらえるはずの人が、70歳からもらおうとすると、780,100円(平成27年度現在)×1.42=1,107,742円となります。ただし、70歳を過ぎると増額率は変わらず、70歳以降のどの時点で繰下げ請求を行っても70歳時点での増額率と同じです。
 
繰下げ請求の場合、「老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方」、または「どちらか一方」でも請求できる点は繰上げとは異なる点です。
 
年金額が増えるのは大きなメリットですが、繰下げの場合でもやはりデメリットはあります。例えば70歳から年金を受給するよう繰下げ請求した後に死亡しても、繰下げしていた間の年金をもらえるわけではないことに注意が必要です。
 
また、例えば、老齢基礎年金を70歳から繰下げするつもりで待機中、68歳に配偶者が死亡して遺族厚生年金の受給権者になったとします。繰下げ増額率は遺族厚生年金の受給権者になった到達月の前月までの増額率に変わります。予定していた70歳までの増額率ではなくなるのです。
 
繰上げ・繰下げともに影響度は、単身者or夫婦、健康状態、老後資金、加入している年金制度などによって大きく異なります。金額の増減額だけでなく、60~65歳未満の自分や家族の生活スタイルをよく考えて判断するようにしてください。
http://woman-money.nifty.com/basic/kihon/detail/150625002043_1.htm
年金入門/年金入門関連コラム
65歳より早くもらうとhappy!!?BUT落とし穴もあるよ!! ◆落とし穴には気をつけて!
 
「いつ死ぬか分からないから、少しでも年金は早くもらおう」と考えている人も少なくありません。でも、何も知らずに繰り上げてもらうと後悔することもあります!
提供:国民年金基金連合会
原 佳奈子
年金入門ガイド 原 佳奈子
 
 
 
 
 
 
文章:石津 史子(All About「年金」旧ガイド)
 
★★★落とし穴には気をつけて!!★★★
 
 
25年以上にわたって、国民年金に加入して保険料を負担してきたりした場合には、65歳になると国民年金から老齢基礎年金がもらえます。平成17年度価格で、79万4500円(40年加入して保険料を納付した場合)です。
 
しかし、どうしても65歳前から年金が必要な場合には、手続きをすれば、老齢基礎年金の支給開始年齢を繰り上げて60歳0ヶ月からでも年金をもらう選択ができます。
 
ただし、本来65歳0ヶ月に受給する権利が発生してその翌月分からもらえるのが老齢基礎年金ですから、1ヶ月でも支給開始年齢を早めた場合には、年金額が一定率で減額されることになります。その減額率は、下記の表のように昭和16年4月2日以降に生まれた人(1か月繰り上げると0.5%の割合で減額になる。60歳0ヶ月(60ヶ月)だと0.5%×60=30%減額)と昭和16年4月1日以前に生まれた人(下記の表のように1年ごとに減額率が決まっています)では異なります。
 
 
 
 
 
 
繰上げ支給    S.16.4.1以前    S.16.4.2以降
60歳0ヶ月    58%    70%
61歳0ヶ月    65%    76%
62歳0ヶ月    72%    82%
63歳0ヶ月    80%    88%
64歳0ヶ月    89%    94%
 
早く年金がもらえると、それを今の生活に生かすことができます。元気な間に気がねなく旅行に行きたいと思うのであれば、その費用を繰り上げた年金で賄うことも可能。
 
落とし穴1…長生きした場合
 
しかし繰上げの請求をすれば、繰り上げた時点の減額率(上記)が適用されるため、例えば国民年金だけに加入をした昭和16年4月2日以降に生まれた人が60歳0ヶ月に手続きをした場合、76歳8ヶ月の年齢になると繰上げをしないで65歳から国民年金をもらった人に追いつかれます。(←損得の分岐点)長生きをすれば、生涯で受給できる年金額のトータルが繰上げをしなかった場合より少なくなってしまうリスクがあります
落とし穴2…遺族厚生年金が支給された場合
 
 
厚生年金に38年加入して働いた夫が、定年退職後ガンになり61歳で闘病生活になりました。妻のA子さんは、夫の厚生年金だけでは心もとないので、自分の老齢基礎年金を60歳に繰り上げて受給することにしました。
 
夫が亡くなった場合、A子さんには遺族厚生年金が支給されます。
しかし、65歳になるまでは一つの年金しかもらえませんので、遺族厚生年金かA子さんの繰り上げてもらっている老齢基礎年金かを選択することになります。
 
通常は、遺族厚生年金の方が老齢基礎年金よりも支給額が多くなりますので、こちらを選択すると、減額覚悟で繰り上げた老齢基礎年金は65歳になるまで支給停止になってしまいます。
 
65歳になると支給停止となっていた老齢基礎年金の支給が再開され、遺族厚生年金と二階建ての年金をA子さんはもらえるようになります。/b>ただし、再開された老齢基礎年金は、60歳で繰り上げた時点の減額率が一生涯適用されます。
落とし穴3…寡婦年金はもらえない
 
 
夫婦で喫茶店を営んできたY子(58歳)さん。
夫婦共にずっと国民年金に加入してきましたが、61歳の時に夫が体調を崩して入院しましたので、国民年金を繰り上げてもらい始めました。そして、もらい始めて6ヵ月後になくなってしまいました。
 
 
 
もし、老齢基礎年金を繰り上げなければ、60歳から65歳になるまでの5年間は、寡婦年金がもらえました。
(参考:寡婦年金は、自営業者など国民年金の第1号被保険者として25年以上加入しており老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていた夫が、老齢基礎年金も障害基礎年金ももらわずに亡くなった場合に、10年以上婚姻期間があり生計維持関係にある65歳未満の妻がいる時に、妻が60歳から65歳になるまでの5年間支給される年金)
 
でも、まさかこのように早く夫が亡くなるとは考えていなかったY子さんにとって、妻としては「長い間かけてきた国民年金をもらわない間に亡くなってしまったら…」という思いもありますから、繰り上げてもらったことに損得はつけたくありませんね…
落とし穴4…事後重症の障害年金は請求できない
 
 
S夫さんは、46歳の時に糖尿病と診断されました。
食事療法なども続けてきましたが、少しずつ合併症もでてきましたので、「せっかく国民年金を32年かけてきたのだから65歳になるまでに死んでしまったらつまらない!」…と、60歳から老齢基礎年金を繰り上げてもらいました。
 
ところが、糖尿病が原因で61歳の時に両目を失明してしまいました。
65歳になるまでに病状が進み、障害基礎年金が受給できるような重い障害の状態になってしまったのですから、もしS夫さんが老齢基礎年金を繰り上げてもらっていなかったら、1級の障害基礎年金を請求できたのです。(←事後重症)
 
32年分の老齢基礎年金を60歳0ヶ月から繰り上げましたので、年金額は37万1900円で月額3万円程度。もし失明した後に事後重症の障害基礎年金を請求したら、99万3100円(月額8万3000円ぐらい)の年金が一生もらえました。
 
いくら頭ではわかっていても、S夫さんのように「死んでしまったら元も子もない」という思いが強くなるでしょうし、少しでも医療費の足しが必要な状況であれば、繰り上げて老齢基礎年金をもらう選択肢はソンだとは言い切れません。
 
ただ、「何も、知らなかった」という後悔だけは絶対避けたいものですね。
http://allabout.co.jp/gm/gc/13364/
記事
シェアーズカフェ・オンライン2014年11月18日 05:00目先の損得にとらわれない これからの年金、早くもらう方法と多くもらう方法 - 野口俊晴
 
 
 
 
■年金もらい時の損得は金額だけでは測れない
現在、年金の支給時期の引上げが検討されています。年金財源の枯渇も問題となっており、若い人にとっては将来年金がまともにもらえるか不安の種だと思います。これからもらい始める引退世代にとっても迷いどころがあります。それが年金の繰上げ・繰下げです。
 
年金の繰上げはもらい始める年齢を前倒しにすること、繰下げはその逆で後倒しにすることです。それぞれ最大5年間の前倒し・後倒しが可能で、前倒しすると1年当たり6%支給額が減額され、後倒しすると8.4%増額されます。この増減は一時的なものではなく、一生続きます。
 
この繰上げと繰下げはどのように考えればいいのでしょうか? もらう時期でどれだけの得があるのでしょうか?
 
まず、年金がもらえる世代になると、年金を繰上げるかどうかで迷う人がいるかと思います。繰上げが損か得かで考えると、実際に繰上げる年からの受給総額と、65歳からの通常の受給総額を比較すればわかりやすいでしょう。例えば5年の繰上げで60歳から受給した場合の受給総額は、76歳中に65歳からの受給総額に追いつかれ、その後は受給総額が逆転し時間の経過とともにその差額は開いていきます。
 
5年繰上げで単純に金額で比較すれば、76歳までの受給総額では繰上げした方が多くなり得ですが、それ以降も長生きすると総額でもらえる金額が少なくなり損になります。平成25年の60歳の平均余命は男性23.14歳、女性28.47歳ですから、平均的には生涯を通じてみれば、繰上げは得ではないということになります。しかしこれだけでは、年金をもらう本人にとって、本当はどちらが得か損なのかわかりにくいから迷うのでしょう。
 
■金額の満足度なのか、今使える満足度なのか
この年金受給については、金額的な効用のほかに時間的な効用があるから迷うのです。効用とは満足度のことです。お金については、一般に金額的には高い方を、時間的には早くもらう方を人は選好します。その方が満足度が高く得だと思うからです。自分の満足度を最大化することを人は選択するわけですが、繰上げるかどうかを選択しにくいのは、どちらの満足度が高いか測るのが難しいためです。
 
生活資金の不足が切迫している、あるいは逆に余裕があるならば、迷うことはないかもしれません。例えば、定年退職後の生活で年金に頼る部分が大きい人にとって、本来の受給額が減ってしまおうがさほど迷うことなく1ヵ月でも早くもらうことで、その人の満足度すなわち効用は最大化するでしょう。確かに金額でみれば損することになるでしょうが、早くもらって「今が使い時」という時間的な効用により替えがたい満足度がもたらされるのです。
 
一方で、年金に頼らなくても生活にそれほど困らない人は、もらえるものは早くもらって「今が与え時」となる可愛い孫の小遣いに使うとか、元気なうちに夫婦で快適な生活のためにさっさと使ってしまうということが最大の効用となります。こういう人たちにとっては、損の勘定(感情)とはならないでしょう。
 
■効用を見極められない3つの要因
実際に繰上げるかどうかで迷う人は、損得の分岐点が微妙なバランスのところにあり、金額と時間の効用をどういう基準で判断したらいいかわからないからです。これについて受給者の立場で整理すると、次の要因が挙げられます。
 
1.年金の「減額率」の意味がよくわからない。
2.繰上げた時の「受給額」が正確にわからない。
3.目先の「効用」(満足度)にとらわれている。
 
■5年で30%の減額率の意味がわからない
1つ目には、「減額」の意味がよくわかっていないということがいえます。繰上受給では、1ヵ月当たり0.5%の年金が減額されます。1年で6%、5年では30%もの減額になります。仮に65歳からの年金受給が100万円あるとします。5年の繰上げでは、60歳の年でもらえる年金額は70万円(100万円×0.7)になってしまいます。これは、1年の減額率が6%で、その分が5年分続くから合計30%の減額率になるということではありません。金額でいうと、60歳での年金額94万円(減額率6%)がその後も5年間続くということではなく、実際には30%分減らされた70万円が毎年支給されることになるのです。簡単に書くと、「マイナス6%×5年」ではなく、「マイナス30%×5年」となります。
 
■減額は65歳までではない、一生続く
2つ目には、年金はいったん繰上げると、減額された金額が一生(生きている限り)続くということです。誤解されやすいのは、年金が減らされるのは「繰上げた年だけ」、あるいは「繰上げた年から65歳まで」と思われがちなことです。つまり5年の繰上げでは、60歳でもらえる年金額は上記では70万円なので、94万円と思っていた額と24万円もの開きがあるわけで、これが5年間でみたら470万円(94万円×5)もらえると思っていたのに、350万円(70万円×5)しかもらえず、これが生涯続くわけですから、この乖離は総額となるとかなりのものになります。
 
■「将来のことより今がだいじ」というバイアス
3つ目には、人間の心理として、目先の利益を最大限優先したくなることが挙げられます。これを、行動経済学では「現在性バイアス」といいます。バイアスというのは、「認知的な偏り」という意味です。将来得られるはずの利得が減ってもいいから、現在に早めて受け取りたいという心理的欲求は誰でも経験するところです。そのくせ、人は少し先の将来のこととなると、自分のことなのに急速に関心がなくなってしまいます。「将来のことなんてわからないから、今がだいじ」というわけです。このようなバイアスにとらわれていると、今の生活が少しでも苦しいと、つい1年くらいなら、と年金を早くもらいたくなってしまいます。
 
■1年先のことならライフプランを見直せ
このように、そもそももらえる金額や仕組みが正確に把握できていなかったりバイアスにとらわれていたりすると、効用の比較などできるはずもなく、それゆえ選択に迷うわけです。なんとなく「お金が早めにもらえるなら」と思ってしまいがちですが、こういう考えこそ将来に大きな「損」を招きます。繰上げの損得を知るには、繰上げたときの受給減額分に見合った効用が「今」だけなのか、将来のどの時点まで及ぶのか、それを見極めるためにも上の3つのことに注意してもらいたいと思います。
 
■繰下げも同時に見据えて考えてみる
もし目先のことにとらわれずにすむなら、繰下げという方法もあります。もらうのを早めるのではなく、もらうのを遅くすることで1ヵ月当たり0.7%、1年で8.4%、3年でも25.4%、5年の繰上げでは40%もの年金増額となり、これが生涯、毎年受給できるわけです。資産運用でこれほどのリターンを出すのは相当至難です。65歳過ぎても働けるうちは働けるなら、それまで繰下げて受給することで、それなりの効用は大きいわけです。ちなみに70歳まで5年繰下げた場合、80歳中に65歳からの受給総額に追いつきます。このように、年金の繰上げは繰下げも同時に見据えて今から考えるべきです。
 
■減額による効用をイメージする
目先1年やそこらでお金が不足するためにわざわざ繰上げるのか、5年、10年、その先まで収入を補うためなのか。よくよく考えてみる必要があります。当面、目先のことだけが問題であるなら、年金を繰上げる前に、まだほかに見直せるライフプラン上の対策があると思います。まずは迷う前に、繰上げた場合にもらえる金額を出してみるといいでしょう。ちなみに年金100万円を1年早めると、今後毎年6万円、1ヵ月で5,000円ずつの減額となります。これを基準にして、あなたにどの程度の「効用」をもたらすか(プラスもマイナスも)イメージしてみてください。
http://blogos.com/article/99021/
実際に支給されている国民年金の平均月額は5万4千円、厚生年金は14万8千円
[2016/1/1 00:00]
 
    リスト
 
実際に年金はいくらもらえているのか
「年金支給額は、国民年金が平均月額で5万4千円、厚生年金は14万8千円」という実績が公開されています。
これは、厚生労働省が12月に発表した「平成26年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」という報告書によるものです。
この記事では、「実際に年金はいくらもらえているのか」という点に絞って紹介します。
 
国民年金の平均月額は「54,497円」
まず国民年金から見ていきましょう。
今回の報告書でわかった国民年金(老齢基礎年金)の平均支給額は、月額で「54,497円」でした。
国民年金の制度上の支給額は年に772,800円、月額に直すと「64,400円」です。
ただし、これは40年間保険料を支払った場合の満額で、実際に、この金額をもらっている人は少ないことがわかります。
ちなみに、60歳で繰上げ支給を受けると満額でも「45,506円」ですが、実際の支給額は「38,312円」となっています。繰上げ支給で3割減となるうえに、満額でないため4万円を切ってしまいます。
厚生年金の平均月額は「147,513円」
次に、厚生年金を見てみましょう。
今回の調査では、厚生年金の月額の平均支給額は「147,513円」でした。
また、厚生年金は加入期間や報酬によって、支給される金額に差があります。そのため、男女差が大きく、平均月額は男性が「165,450円」、女性が「102,252円」となっています。
厚生年金については、厚労省では夫婦二人のモデルの想定支給額を公開しています。これは、40年間サラリーマンとして働いた夫と、専業主婦の組み合わせが想定されています。その金額は「221,507円」です。
このモデルに、さきほどの平均月額を当てはめると、夫の分が「165,450円」、妻の分が国民年金なので「54,497円」で、合計すると「219,947円」となります。
つまり、男女の支給額の差を加味すれば、実際に支給されている年金額は、厚労省のモデルに近い金額と言って良いでしょう。
リアリティのある数字
今回の報告書に書かれた年金の月額は、実際に支給されている金額なので、自分が貰える年金額に近い数字と言えるでしょう。今後の生活設計を考える際の参考としてください。
最後に、今回の平均月額から計算した、家族構成別の1月当たりの支給額をまとめてみましょう。
繰り返しになりますが、厚生年金については個人差が大きいので、ざっくりした目安と考えてください。
国民年金 単身者
54,497円
国民年金 夫婦
108,994円
厚生年金 単身者
147,513円
厚生年金(夫)+国民年金(妻)
219,947円
厚生年金 夫婦共稼ぎ
267,702円~295,026円
https://seniorguide.jp/article/1001439.html