転載元→http://longtailworld.blogspot.jp/2011/08/safecast-radiation-monitoring-in-japan.html



「アキバでぼったくり不良品のガイガーカウンターなんか買っちゃダメだよ、送るから!」と栃木の兄に約束してきたのはいいのだけど、さて、どれを買ったものやら…悩んでいたところで、このSafecast(セーフキャスト)が渋谷で5日開いた「Radiation Seminar(放射能セミナー)」の録画を見て、とても参考になった。

Safecastは3/11直後にMITメディアラボの伊藤穣一(Joi Ito)氏らが立ち上げたクラウドソースのムーブメント。市民が集めた情報を市民に公開する国際ネットワークを目指している。その活動第一弾として日本国内に半年で放射能計測センサ500台を投入し、生データをウェブで随時更新するネットワークの構築を急いでおり、これはその活動報告も兼ねた公開セミナーだ。

5日と言えば同じ日にヤフージャパンも全国11カ所のガイガーカウンター計測値を5分置きに更新する「放射線情報」ページの公開に踏み切ったが、なんとあのデータもここから出てるんだって! クレジットないって怒ってる!

人海戦術のSafecastはなにしろ観測ポイントが段違いに多く、固定センサーに加え、ボランティアが車にセンサ積んで道を隈なく走って足で集めたデータまで盛り込まれている。もう下手なガイガーカウンター買うよりこのウェブ見たら一発じゃんね。

でもまあ、この「家の中のホットスポット」というところが気になるので、ガンマ以外も測れるパンケーキチューブ入ったやつ1個買って送ろうっか…知ったところで…だけど、除去できるものは除去した方がいいもんね…

[視聴メモ]

(40:30 Joiさん)今すごく危険なのは日本で、ボロい安いガイガーカウンターがいっぱい高く売りに出ていること。僕が一番心配しているのはアルファ、ガンマ、ベータとあって、ガンマは発電所の中で壁を通ってきて外部被曝するものでみんなこれは測ってるのだけど…アルファとベータは内部被曝のとき心配なものなんですね。でも、「あってはならない」被曝物質が外に出ることは「あり得ない」と日本は考えていたので、アルファとベータを測るのなんて想像もしていなかった。従って今のガンマのセンサというのはバラバラにしてみるとセンサの前に、この、鉄のブロックがあって、アルファとガンマは全くこう、省くと。インターネットでアルファとガンマ線で検索すると、「過剰に反応するのでこのデータは間違いである」と。でもこれはそもそもすごく大きな間違いで、体外被曝を測るときにはガンマは必要なのだけど、体内被曝を測る時にはアルファとベータ測んなきゃいけなくて。今みんな売りに出てる日本の基準のセンサというのはガンマしか測ってないんです。

従ってガンマのガイガーカウンターをりんごに向けて「これ大丈夫だ」って言っても全く関係なくて、間違いなんです。

一番僕が心配してるのは、みんなこの安いガンマのガイガーカウンター…安くないガイガーカウンタ買って、それでいろいろ測って安心する、というのがまず、すごく大きな問題

それとこれ我々「パンケーキ」と呼んでるんですけど、こういうセンサ(42:18)、これがアルファとベータ測るには一番いいセンサで、結構高いんだけど。うちが使ってるガイガーカウンタはみんなこれなんだけど、これを家のなんていうのかな、セシウムが流れこんで溜まってる辺り(雨樋)に当てると外の40倍ぐらいジジジーッと鳴るわけですよ。今このボロっちいやつをバッとつけても微妙に2割ぐらい上がるか上がんないか。すごい暑いところでも。従ってこういうので普通に安心しちゃだめで、今一番ちょっと我々が抱えてる問題は、こういう高いやつ、手に入んないこと。

学校の周りの一番ホットスポットになってるところを割り出して、それをひっかいたりして掻き集めて処分するってのが必要なんですけど、間違ったセンサのガイガーカウンタ使っても、たぶんそれはできない。

で、もっと酷いのが、とりあえずガンマ測れるガイガーカウンタが日本の会社から出てきてるんですけど、これあの…中国っていうアレ言って批判されるかもしれないけど比較的中国製が多い…あのもう…まったく、ほとんど効かない、ほとんどデタラメのようなのも出てるので、みんな気をつけていただきたい。我々の方で測ってページに公開しますので、変なもの買わないでください。買うぐらいだったらチームに連絡してくれれば測りに行きますから(にこにこ)

44:29(東京ハッカースペースでDIYのガイガーカウンタ作ってるスキンヘッドのKalinさん)基本的にそのまあ、中国が作ってるっていうと、聞いたこともないメーカーが作ってるってことですね。ガイガーカウンタ作ってる会社は世界的に数社ぐらいしかないんですね。で、今その福島の問題が起きてから、普通に秋葉原行くと20種類ぐらいのものがあって、まったく聞いたこともないメーカーが非常に多いんです。

(チームが郡山の学校の裏で採取した土を計測する様子)
300CPM = 1 micro Sievert/hr

(Joiさん)よく出先で「これは国が認めたガイガーカウンタか?」と聞かれるんですけど、内部被曝はあってはならないことなのでアルファ、ベータを測るガイガーカウンタは国としてはあんまり認めてないんですよ。


What we have found?
53:31 (Kalin Kozhuharovさん)いろいろ測って何が分かったか? 現時点ではまだ集計途中なんですけど、まずアルファ線に関しては見つかっていません。ベータとガンマは充分あります。どこから出ているのか? ほとんどはセシウム-134、セシウム-137から来ています。ヨウ素は(計測には)入ってません。原発の近くには行ってないし、正確に測り出したのは4月中旬ぐらいからでヨウ素の濃度の数値は非常に落ちているので、我々も測っていません。

ホットスポットというのが最近マスメディアでも取り上げられていますが、まずローカルのホットスポットというのは非常にちっちゃいものですね。例えば学校の中とか普通の家の中とか、なんていうのかな、例えば水が流れているところを測ると、まあ、百倍ぐらい上がってます。1mだけ離れると逆に百倍下がっています。だから自分の家の中でどこがホットスポットなのか、元々あるのかどうか測定して、そのホットスポットだけをなんとか処理すれば全体の放射線は倍下がります


土地ごとの平均値の差もあります。○○区が○○区の3倍、4倍、というぐらいのことはあります。が、さすがに都市単位になると100倍違う、ということはほとんどありません。

55:45 我々が測った中では千葉、那須、我孫子、郡山など。それがなぜホットスポットか? 福島第一の周辺ではありません。でもここで一番大事なのは、放射線は距離に比例するわけじゃなくて、風とか雨とかいろんな現象によって集まってるところがあるんですね。どこに集まってるかは測らなきゃわからない。地図を作らなきゃいけない。そこが非常に問題で、そこに行かないと測れないわけです。最近は飛行機・ヘリ使ってなんとか測っていますが、それが測れるのは都市レベルまで。飛行機からは「その家のどこがホットスポットか」というのは見えません。だからそれは自分でガイガーカウンタを持って、今回アルファはあんまり関係ないんですけど、ベータまで測れるものじゃないとちっちゃいホットスポットは見つかりません

57:08  で、その汚染ですが、先程話したようにみんな空気中の何ミリシーベルト、何マイクロシーベルトという話をしてますが、別に空気中が汚染されているんじゃないんです。地面から出ている放射線を空中1メートルで検出してる、ってことなんですね。元々空気の中にないもの。最初はいろんな埃とかに付着してきて、それがいったん地面に落ちます。地面と言ってもアスファルト、コンクリート、屋根の上ですよね。フラットなところに付いてる。それは水で洗っても除去できないものが多いんですね。

今、例えば郡山、福島で測ると、家の中は放射線は非常に高い。外より高い。なぜかって言うと、屋根の上にたくさん付いてるから。屋根を通して中に放射が入っています。その屋根はどうすれば洗えるのか? というのが、まあ、これからの問題ですね。

58:27 どういう性質を持っているか? というと、コンクリート、アスファルトに関しては非常にこう、くっついてるものですね。

それはどうやって取れるか?…というと高圧洗浄器とか基本的に物理的なとり方しかないと思った方がいいですね。だからブラシとか使って、例えば木の中に染み込んでるものは本当にサンドペーパー使ってやるとか。とにかく作業になりますし、その時に大事なのは多少空気の中に飛んできますので…ちゃんとしたマスクを使ってください。風邪のマスクではなくてもうちょっとちゃんとしたマスクが必要です。ホットスポットがあって、放っとけば動かないものを自分で削ってそれを吸い込むと、倍ぐらいの問題になります。だからちゃんとしたマスクがない限りはそれはやらない方がいいです。

屋根の構造によっては、例えば鉄板とかの屋根だったら、落ちてきてもボンド(付着、接着)はしません。雨が降ってきて屋根全体を洗って下に集まって落ちてくるところ、アスファルトとかコンクリートに出るところに数百倍ぐらい集まってます。本当にこれぐらい、1m×1mぐらいのところがホットスポットなんですね。そういうことは非常に注意した方がいいですね。だから古い家とかは水がそのまま流れてますから、その流れてくるところがホットスポットです。最近の家だったら直接どっか(下水に)行くので、それは問題ではありません。

(司会のPieterさん)会に集まったガイガーカウンターはボランティアに渡しています。写真は会津若松のボランティアグループ。

普通の学校には政府から1個ずつガイガーカウンタを配ってるんですが、orphanage(孤児院・児童養護施設)は学校なのに配ってないんですね。そこでこないだ私たちの方から児童が100人ぐらいいる福島のorphanageにガイガーカウンタを渡しました。

1:02:15  会では車載システムで計測して回るプロジェクトも行っています。ちょうど千葉から会場に車が到着したので…渋滞で遅くなりましたが…見たい方は後ほどどうぞ。Kalinさんからデータの説明をします。データポイントは今50万件ぐらい。3ヶ月で大体130回ぐらいドライブしました、1日1ドライブで。ボランティア50人ぐらいが全員集まってこれを作ったっていうところなんで。

[地図表示]ご覧の日本地図の静岡から気仙沼まで、このシステムで運転してきました。ではKalinさん、よろしく。

(Kalinさん)とりあえず今見ているのはそのひとつの地図であって、大体我々が測っているデータのいろんなアベレッジをとって数値化しているものです。現時点ではまだ公開に1日、2日ぐらいかかると思いますが、「準備中」としてSafeCastのサイトで見れるようにはなります。

1:04:30  ズームインして。ここは(福島第一から)20kmのゾーンなので我々も入ってませんけど、その端っことか見ると、こことかはちょっと…まあ、ちょっとではなくかなり放射線が高いのが分かります。データは50万件ポイント(観測地点)があるので、それを1個1個表示すると、もうワケ分からなくなるので、ここでは11ポイントの平均をひとつのポイントとして表示しています。

もうちょっとこう、ズームすると、一応もっとデータが出ます。ちょっと時間がかかるかもしれないですけど…細かいところとかちゃんと見れるようになってます。我々の機械は基本的に5秒ごとに測っていますので、沢山のデータがここに集まっています。

いわき。いわきはひとりのボランティアさんが非常に沢山データを集めています。これは上のレベル(俯瞰図)ですけど、もっとズームすると沢山出てきますよ。この1個の点は実は23個の観測ポイントをあらわしていて、さらにズームするとこの20倍とかのデータがあるんです。彼はほとんどのちっちゃい道を全部走ってデータを取ってます。そういうことをやっています。

現時点までに測ったところは大体これぐらいですね。例えばこれは先ほど話に出た大島(船のデータもある。1個1個数値は違う)

ひとつ注意しなきゃならないのは、地図では色を使ってレベルを表していますが、それが緑であるからって安心かどうかというと、それは全く意味がなく、それは緑だってことですね。安全かどうかは各自で判断してください。とりあえずデータとしてはこのような感じで、沢山のボランティアが毎日のように先程見せたものでこちらに送ってきて、それを公開していきます。今、人が足りてないので1日、2日かかりますが、できるだけ早く公開しています。

我々のデータはクリエイティブ・コモンズのライセンスで提供します。基本的にデータが必要な方は今ちょっと準備中なのでメールくれればすぐ渡します。近いうちにこのウェブサイトで自分でダウンロードできるようになります。生のデータ。もう本当の。我々が測った数字は公表するってことですね。

1:08:30 (Pieterさん)ちょっとコメントしたいのでワンレベルぐらいズームアウトして…数字が細かいので補足しますね。ここ東京なんですけど、東京が1で考えれば、千葉の方に行くと大体3から5倍ぐらい上がるんですね、放射線の数が。ホットスポットは例えば松戸、我孫子の方で…よく見えないと思うんですが…ここは上がってきます、一番高いところで大体0.35ぐらい出ます。東京だったらある農家が、足立区がホットスポットなんで、それがどこにあるかな…このぐらいですね…。

もっと上の方に行くと、例えばいわきは千葉県より少し低いんです。いわきがもっともっと原発に近くて大体40km、35kmぐらいなんですけど、千葉県より低いんです。それで例えば栃木県…というか西那須に行くとまたホットスポットがあって、大体1マイクロシーベルト出ます。

福島県に行くと高いところが郡山、二本松と福島市がかなりこの…よく見えると思うんですけど、これが1~○○マイクロシーベルトぐらいなんですけど、汚れを確認すると東京の100倍から200倍ぐらい出ます。

静岡、名古屋に行くと、東京が名古屋の3倍から4倍ぐらい。こう考えると、どのぐらい違ってくるかは理解し易いのではないかな、と思います。1マイクロシーベルトと言われてもピンとこないけど、どのぐらい差があるかはこの地図を見るとよく分かりますよね。

もっと北に行くと、大体仙台ぐらいまで上がるんですけど、山形県に入って一番標高の高いところ、羽黒山と月山の上まで登ったんですが、月山の上は標高2000mぐらいで放射線は下の方とまったく同じで汚れはなかった、と。

1:11:20  津波のひどかった石巻、女川とかに行くと、数値は少なかったんですが、女川原発の玄関まで行ったら少し上がってるところもありました。それが福島原発から来ているのか、どこから来たかまでは確認できなかったんですが、ホットスポットありました、先週ぐらいの数字ですが。

地震がひどいところを測るとほとんど放射線はなくて、津波で水の多いところは放射線はどこもなかったです。

例えば郡山市や福島市の中に入ると、なかなか同じ街の中でも放射線の高さが良く変わります。1kmの間で2倍、3倍になることはよくありますので、やっぱりこのぐらいの具体的な確認をしないとどこに何があるかは詳しくわかりません。私たちも測るまでどうなるか分からなかったんですが、やっぱり測らないとわからない、と。これからこういうことももっと大きくして、よくやらなきゃならないと思いますね。

1:13:00 (Kalinさん) 最終的に問題が起きた時は…都道府県ごとに1個の数字がありましたよね、東京都は何マイクロシーベルトとか福島県は何マイクロシーベルトとか。この地図を見る限りは、あまりその…幅広いエリアをひとつの点で表すことにはあまり意味がないことが分かります。

都市レベルのホットスポットとかローカルのホットスポットというのは、ここには…まあ、意外と分り易いスポットがあって、えーっとまあたぶんこれぐらい…かな…やっぱりこの中心部は非常に高い…ということ。どれぐらい高いかというと、1.…例えば1.10、1.20とか…まあ、この地図の色が(紫から青に)変わるのは1.0のところなので、ここは1.0以上、ということはひとつのホットスポットである。だから同じ郡山でもここに住んでいるか、ここに住んでいるかで、非常に違います。0.2なのか1.2なのか…ていうので6倍ぐらい変わります。だからできるだけ細かい地図を作るのが非常に大事なとことですね。まあ、ここら辺を見ると0.16…まあ、東京並みのホットスポットではなくコールドスポットがあります。たまたまここに自分が住んでると、うれしいかもしれない。

1:15:00 (Pieterさん)僕たち6月から慶応大学とコラボレーションしています。

1:15:30 (慶應)はい、慶應の村井教授がSafecastのアドバイザーということもありまして、我々の方もサポートしていこうということで、先ほどKalinさんが見せた地図の点になってるところの間を埋めてきれいな地図にしていく、などやっていきたいと思っています。

1:17:00(Joiさん?) 因みに今日…昨日発表のあったヤフーの放射線のページがあると思うんですけど、慶應大学の名前はちゃんと出たんですけど、実はそこのデータはさっきのSafecastのボランティアたちが集めたデータが入っていて、全くSafecastのことをヤフーのプレスリリースとホームページに書いてないのはけしからんと私は思ってるんですけども。ま、直していただけるといいんですが。あの、一応なんかいろんな報道機関から私たちの方に「ヤフーと一緒にやったらいいんじゃないの?」というメールがきてるんですが、実はそれ我々の方から出てるんで。

1:17:40 (慶應) 我々の方のホームページも今「Safecastと一緒にやってます」とトップに出させていただいたので、ヤフーの方も対応していただけるということで今、人が向かってます。