最初にFさんの焼きそば大が運ばれてきました
中の1.5倍と思われるその量はなかなかの盛りで、成人男性でも十分満足出来そうな感じでした
Fさんが少し苦笑いしてたので、女性に大を勧めてしまった事に少し後悔しました
私のは3人前なのでこれの倍くらいと考えると、なかなかのガチンコ勝負になりそうです
私「冷めてしまいますので、お先に食べてください」
私のモノがなかなか運ばれてこないのでFさんにそう告げます
こちらの焼きそばは真っ黒で麺は平打ちの太麺、具材はキャベツのみとまさに豪腕・直球勝負です
Fさんは無言で食べ始まります
あまり見ているのも失礼なのでとりあえず店内を見たりして時間を潰してみます
その時、店の奥から40センチはあろうかという大皿にこんもり盛られた焼きそばをおばちゃんが両手で慎重に運んでくるのがのが見えました
大人数でシェアして食べるであろうソレにドン引きし、一体どこのグループが頼んだのかと見ていると、こちらにゆっくり向かってきました
まさか…と思っていると、私の前に無造作にドガッと置かれおばちゃんは立ち去りました
目の前の焼きそばはまるで富士山のように見事な山になっており、Fさんの焼きそば大の5、6倍は余裕であるように見えます
工事用のヘルメットが2、3個積み重なったと表現すればいいのでしょうか
もうテレビで見るような大家族の食卓でしか見ないようなシロモノです
おばちゃんの間違いでは無いかとメニューを今一度よく見てみると、トリプルは上から3番目の盛りで、1番上はギャルな大食いタレントが今の2番目、かつては1番上の量を完食してしまった為作ったメニューらしく、2番目以上はあまりの盛りに特盛りとかの名前を付けられなくなった物だそうでした
さらにメニューを見てみると、下から小、中、大ときて特大、次にジャンボ、その上になぜかダブル、名無しとあり、トリプルはその上でした
トリプルは中の3人前と勝手に思ってましたが、どうも特大かジャンボの3倍くらいでは無いかと思われます
さらに言うとトリプルの上が特に名無しという感じのもので一時期はギャルなタレントの名前が付いてた物みたいです
完全にやってしまったという後悔でしばらくフリーズしてしまいました
Fさんも箸を止めてドン引きしています
しかし注文してしまったのはもう仕方がないので、とりあえず食べる事にします
味は見た目のドス黒さとは裏腹に意外とサッパリしていて、ソース感は薄めで味噌かカラメルか分かりませんが優しい甘みがあります
一般的なソース焼きそばを想像してると独特の風味に違和感がありますが、食べ進めていくとこれはこれで美味しく思えてきます
Fさんも食事を再開し、お互い特に会話もなく黙々と食べ続けます
しかし山で言う一合目付近にまでたどり着いた時問題が一つおきました
味が単調かつそばもなかなかドライで口の水分が持ってかれる事です
普通の食事ならこの一合目で終わっていてもおかしく無い状態です
水をチビチビ飲みながら再び登山を開始します
そして2合目、3合目と着実に登って行き、4合目に差し掛かる頃ついに満腹中枢の警告音が聞こえ始めてきました
ここで第一のターニングポイント、攻めるか退却するかの選択を迫られる事になります
しかしFさんもまだ食べ終わっておらず、何より周りから「あいつ調子に乗ってデカ盛り頼んだけどやっぱダメで残したヘタレだぜ」と思われるのもシャクであるので、意を決し続行する事にしました
味はまだギリ美味しく食べられるのですが、何より味に変化が無いのが非常に辛いところです
気合いを入れ直し食を再開し、ついに半分5合目まできました
Fさんは苦戦しながらも大を食べ終わるところで、このままだと私がひたすら食べてるのをFさんがただ見てるみたいなシュールな絵面になってしまいます
ここまで会話も全く無かったのですが、「もしよろしければかき氷かコーヒーどうですか?」と勧めました
とりあえずFさんはコーヒーとまんじゅうを頼みましたので、私はその間にスパートをかける事にします
あと半分ですがはっきり言って減っている気がしませんでした
しかし客観的に見ると、大家族の食卓から食べ盛りの子供2人の一家くらいの量になったと思います
腹ももう満腹ではありましたが、何かに背を押されるように立ち向かいます
そして6合目、7合目と達成し微かにですが終わりも見えてきました
ここに来ると身体が拒否反応を示し変な汗も出てきました
しかし変な使命感のようなものに突き動かされ食べ続けます
8合目辺りに来た時にようやく最初に私が思っていたトリプルくらいの量になりました
腹はもう限界をとっくに超えて未知の領域に踏み込んでいます
もう残してテイクアウトするか…
しかしこの中途半端な量を残すのもこれまでの苦しい道を考えると悔しく思えてきます
ここでFさんが
「大丈夫ですか?」
と声をかけてきました
時間はすでに一時間くらい経ってます
Fさんもまんじゅうを食べ終わり、待機状態になってます
「大丈夫です、すいませんすぐに食べます」
と言い腹がはち切れる覚悟で焼きそばを詰めていきます
ここまで来ると水を入れると命取りになると本能で察していたので、大皿を抱えて一気に頬張ります
9合目を駆け抜け、一気に頂上へ走り抜けます
そして最後に残ったキャベツを口に入れ、水で流し込みフィニッシュ…
正直フルマラソン走った方が楽だったのでは無いかと言う苦しい戦いになりました
店に入って一時間半、ふと考えるとFさんとほとんど会話をしないまま終わってしまった事に気がついてしまいました