今日は痛みのお話です
みなさんから相談を受ける機会が多い病態ですが、間違った対処法をしている方がたくさんいるので、是非、理解して今後にお役立てください
中医学には「不通即痛(ふつうそくつう)」いう考え方があります
「通じなければ、即ち痛む」
つまり、何らかの原因で、血(ケツ:栄養分)や気(免疫力や身体に必要なものを動かす力など)津液(シンエキ:血以外の水分)の流れが悪くなると痛みとなって現れる、ということです
更に痛みはその原因によって、実と虚に分けられます
実は「要らないものがある状態(必要なものでも余分に有り過ぎると実になる)」、虚は「必要なものが足りない状態」とお話しましたが、痛みも実か虚かを見極めることが大切です
1「実の痛み」
①瘀血(おけつ)の痛み
これは今まで私のblogに何度も登場していますが、血(ケツ)が固まったり、ドロドロになったために起こる痛みで、打ち身・打撲・捻挫・ぎっくり腰などの急性的な痛みです
その他、寝込む程激しい月経痛、狭心症なども瘀血の痛みになります
瘀血(おけつ)の痛みは、「刺痛(シツウ)」と言って、槍で刺されたような痛み、つまり動かすことが出来ないとか、我慢することが出来ない非常に激しい痛みです
瘀血(おけつ)の痛みに使われる一般的な処方は桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)これはドロドロ血をサラサラにする効果があります
服用すると、すぐに血液がサラサラになり、打ち身、捻挫、打撲の場合は、RICE療法と合わせることにより、軽い場合は一日で痛みが治まり、腫れやあざも3日程で消えていきます
またもっと激しい瘀血状態になると、血(けつ)が固まった状態になります。これは血塊と言って、瘀血の中でも更に激しい痛み、のた打ち回るような痛みになります
子宮内膜症、脳内出血、心筋梗塞などのように、出血して行き場が無く、血(けつ)が固まった状態が血塊の痛みで、多くは便秘を伴います
(便秘と言っても、本人が気づかない場合もあります。例えば、「一日1回便通があったのに、そう言えば今日は便が出ていない」とか「便意があってトイレに行ったのに出ない」とか「肛門の近くまで来ているのになかなか出ない」とか「沢山食べたのに、食べた量の6-7割しか出ていない気がする」などです)
このような血塊の状態を改善するのが桃核承気湯(とうかくじょうきとう)。これは血(栄養)の塊を便として、体外に排出する効果があります
血塊があって、桃核承気湯が甘く感じる場合、血塊の状態によって効果が出るのに日数がかかりますが、早ければ数十分以内に、遅くても翌日中には便秘状態が改善し、スルスルという表現が相応しいほど、気持ちがいいくらい簡単に、普通のお通じがたくさん出てきます
ただし、桃核承気湯の効果は非常に激しいため、血塊が亡くなった途端、下痢便になりますので、便が出たら、すぐに服用をやめ、瘀血状態がまだ残っている時は、桂枝茯苓丸に変更します
軟便状態になってもやめずに、更に飲み続けると腹痛を伴うようになり、酷い場合は水溶性の便、水瀉性の下痢便になりますので、軟便になったら桃核承気湯の服用はすぐにやめなければいけません
その桃核承気湯の効き目を如実に表した逸話があります。私が中医学講座で講師の先生(1930-40年代に生まれた方)から伺ったお話
昔、その講師の先生の先生にあたる方(大先生)が、夜、交通事故に遭い、救急車で病院に運ばれたそうです
そして当直の医師に診てもらったところ、酷い骨折で手術が必要とのこと
けれど、夜間の手術は出来ないので、翌日手術を行うということで、一晩病室で痛みに耐え、待っていなければいけないことになりました。しかも、手術まで特に何も処置はしないとのこと
そこでその大先生は弟子達に連絡し「桃核承気湯を持って来い」と言ったそうで
早速、弟子達が桃核承気湯を持って行き、一晩、何時間おきに桃核承気湯を飲み続けたそうです
そして翌朝、医師が診断に来たところ、普通なら、交通事故の翌日は怪我をした場所が、とんでもなくパンパンに腫れ上がっているはずなのに、その大先生は全く腫れていなかったため、担当の医師がビックリしたとか
一晩中、桃核承気湯を飲み続け、排便していたせいでしょう
と、その先生は仰っていて、弟子達も桃核承気湯の効果を実感したそうです
ということで、私は、打ち身・捻挫・打撲などの急性症状の時は、まずは桃核承気湯を服用し、便によって血塊を排出させ、その後、桂枝茯苓丸に切り替え、瘀血を改善させる、というやり方をしています
瘀血状態になった時は、便秘傾向になりやすいため、桃核承気湯を飲むと、嘘のようにスルスルとお通じの出が良くなるので非常に爽快で、気分もすっきりするため、オススメかと思います。お試しください
以上、lalaのお薬情報でした
日本漢方(古方)と中医学(中国漢方)の違い