Q.父から相続時精算課税制度の贈与により土地を取得しましたが、当該土地を相続後売却しました。
 この場合、相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例の適用はできるのでしょうか?


A.<解答>
 一定の要件に該当すれば、取得費加算の特例が適用できます。

<解説>
(1) 取得費の概要
 譲渡所得の金額は、
(土地などを売った収入金額)-(取得費+譲渡費用)

で計算します。取得費は、土地の場合、買い入れたときの購入代金や仲介手数料などの合計額です。相続により取得した土地の場合には、被相続人が購入したときの購入代金や仲介手数料などの合計額が取得費になります。

(2) 取得費加算の概要
 相続した土地を一定期間内に売却した場合には、相続税額のうち一定期間内に売却した場合には、相続税額のうち一定の金額を、購入代金や仲介手数料などの取得費に加算できる特例です。

(3) 相続時精算課税制度と取得費加算の特例
 相続時精算課税制度を適用して贈与により取得した財産は、要件を満たしていれば取得費加算の特例の対象になります。

(4) 贈与税暦年課税制度と取得費加算の特例
 贈与税暦年課税制度による贈与財産は、相続で財産を取得した人が被相続人から受けた相続開始前3年以内に贈与財産に限り、相続税の課税価格に加算されます。
 この加算された財産は、要件を満たしていれば取得費加算の特例の対象になります。

相続時精算課税制度で取得した財産

取得費加算の特例 可能。
<解答>
 「収益物件」や「値上がりする可能性の高い財産」などが挙げられます。

<解説>
(1) 生前贈与する効果のある財産は
 相続時精算課税制度を選択した場合において、取得した財産を相続時において贈与時の価額により相続財産に合算するという点に注目すれば、相続時精算課税制度で贈与した財産が相続時までに評価が増加した場合には有利となり、減少した場合には不利となることがわかります。また、親が子に収益を生む財産を贈与することも、将来の親の財産の肥大化を防ぎ、相続税の負担を軽減することができます。
 以上のことから(2)以降具体的に見ていきたいと思いますが、あくまでも有利になるかどうかは相続財産全体を把握している上でのシミュレーションが必要になるといえるでしょう。

(2) 収益物件の贈与による収益移転の効果
 生前に、例えば親が賃貸しているマンション、アパート等の収益物件を贈与すれば、そのアパート、マンション等が生む家賃等の収益は受贈者である子に帰属することになり、本来なら、家賃収入は親の元へと入り、将来の相続財産の基となっていたものが、生前に子に移転するため、親の財産が家賃収入分肥大化することを防ぎ、相続時に相続税の負担を軽減させることができます。
 ただし、贈与財産が土地、建物である場合においては、貸家建付地の評価や小規模宅地の特例などの適用関係から、生前贈与をしないほうが有利となる場合もあるため、そのための税負担を比較することが必要であると考えられます。

(3) 将来値上がりする可能性の高い財産
 前述しましたように、相続時精算課税制度を選択した場合には、相続時において贈与時の価額により相続財産に取り込まれるため、将来、つまり相続時に値上がりする可能性の高い財産を生前の低い価額のうちに生前贈与をしておけば、実際の相続時の価額よりも低い価額で、相続財産に取り込まれるため効果があるといえるでしょう。
 では、具体的に将来値上がりする可能性が高い財産とは、例えば、急速に業績が伸びているような法人の株式(上場株式、未上場株式を含む)や地価の値上がりしそうな土地等が挙げられます。土地については、最近では地価が値下がりするということはあっても、値上がりするということは滅多にありませんが、将来、道路ができたり、鉄道ができたりといったような開発地域については、土地の地価が上昇するといったケースもありますので、そのような土地については、生前贈与が有効かと思われます。

(4) 効果的な使途の見込める財産
 効果的な使途を考えれば、様々なものがありますが、例えば、子が真剣に事業を開始するために元で資金が必要である場合に成功に導くために何らかの援助をしてあげたい場合、または、将来海外に出て働く夢を持っている子の海外留学資金を援助し、子が夢をかなえるための援助をしてあげた場合、さらに、子に金利が高い借入金を返済したほうが有利になる場合などその贈与の使いみちによって効果が得られると考えられるものについては、相続税の負担が減少するかどうかにかかわらず、生前贈与をしてもよいかと思われます。
 代替資産の範囲は以下のどれかで判定することになります。収用などによって得た補償金のなかで、代替資産の取得に充てた部分の額が課税の繰り延べの適用をうけることが可能となります。
  (1)一組法
(2)個別法
(3)事業継続法
ちなみに一組法は、区分が違う2以上の資産(建物や土地)で、1つの効果がある一組の資産により判定をする方法のことを指しています。同一所有者の資産について効果が同じである一組の資産につき、代替資産の範囲を広げる狙いがあります(ほかの者が有する資産と会わせて一組の資産となっているときまでは範囲を広げません)。
Q.私は東日本大震災で被災したことから、住宅ローンを用いて自宅の再取得をしました。このような
場合に、住宅ローン控除の適用を受けることができるのか否かを教えてください。


A.住宅ローン控除の適用を受けることができますが、選択により、通常の住宅ローン控除の適用に代えて、住宅の再取得等に係る住宅ローン控除の特例の適用を受けることもできます。さらに、従前の家屋に係る住宅ローン控除の適用を重複して受けることが可能です。

1.(特定増改築等)住宅ローン控除
 (特定増改築等)住宅ローン控除とは、住宅借入金等を用いて家屋の新築、購入又は増改築等を行い、その家屋を居住用として使用した場合において、一定の要件に合致するときには、次の金額を所得税額から差し引くことができるという制度をいいます。
住宅借入金等の年末残高×控除率=住宅ローン控除額
ただし、この住宅ローン控除額には、次のような限度額が設けられています。
限度額=居住年における年末残高限度額×控除率
 具体的には、平成24年中に住宅借入金等を用いて家屋を新築した人の年末残高が3,500万円であ
るときには、3,500万円×1.0%=35万円なのですが、平成24年分の限度額は30万円(3,000万円×
1.0%)ですので、住宅ローン控除額は30万円ということになります。

2.適用期間の特例
 東日本大震災で被害を受けたことにより、住宅ローン控除を受けていた家屋を居住用として使用できなくなった場合に、その使用できなくなった日の属する年の翌年以降の残りの適用できる年に関して、住宅ローンの金額があるときには、その適用できる年においても引き続き住宅ローン控除の適用を特例措置により受けることが可能です。

3. 住宅の再取得等に係る住宅ローン控除の特例及び重複適用の特例
 (1)概要
  東日本大震災で、所有する家屋が被害を受けたために、自らの居住用として使用できなくなった人が、住宅の取得等を行い、その住宅を居住用として使用した場合、選択により、上記1の(特定増改築等)住宅ローン控除の適用に代えて、住宅の再取得等に係る住宅ローン控除の特例の適用を受けることが可能です。
ア.居住を開始した年が平成23年であるとき
控除期間は10年。年末残高限度額は、原則として、すなわち(特定増改築等)住宅ローン控除の
適用を受けると4,000万円ですが、住宅の再取得等に係る住宅ローン控除の特例の適用を受けると4,000万円となります。各年の控除限度額は、原則として年末残高×1.0%(40万円)、再取得等の特例の適用を受けると年末残高×1.2%(48万円)となります。
イ.居住を開始した年が平成24年であるとき
控除期間は10年。年末残高限度額は、原則として3,000万円、再取得等の特例の適用を受け
ると4,000万円。各年の控除限度額は、原則として年末残高×1.0%(30万円)、再取得等の特例の適用を受けると年末残高×1.2%(48万円)。
ウ.居住を開始した年が平成25年であるとき
控除期間は10年。年末残高限度額は、原則として2,000万円、再取得等の特例の適用を受け
ると3,000万円。各年の控除限度額は、原則として年末残高×1.0%(20万円)、再取得等の特例の適用を受けると年末残高×1.2%(36万円)。
  なお、居住を開始した年が平成25年までとなっていますが、以後の税制改正等で制度の延長等の可能性があります(平成24年10月現在)。
従前の家屋と再取得住宅について、住宅ローン控除の適用関係をまとめると、次のようになります。
ア.従前の家屋に係る住宅ローン控除
 平成23年(滅失年)には(特定増改築等)住宅ローン控除の適用を受けることができ、平成24年・25年には適用期間の特例の適用を受けることができます。
イ.再取得住宅に係る住宅ローン控除
 平成23年・24年・25年において、選択により、(特定増改築等)住宅ローン控除の適用に代えて、住宅の再取得等に係る住宅ローン控除の特例の適用を受けることもできます。
そして、上記のアとイは、重複して適用を受けることができます(重複適用の特例)。この場合における控除額は、各々の控除額の合計額となります。

 (2)特例の適用手続き
  住宅の再取得等に係る住宅ローン控除の特例の適用を受けるためには、確定申告書に、東日本大震災で被害を受けたことにより、従前の家屋に居住することができなくなったこと等を明らかにする一定の書類等を添付する必要があります。
Q.東日本大震災の発生に伴って、私は被災市街地復興土地区画整理事業等のために、所有している土地の譲渡を行いました。こうした場合にはいわゆる収用等に当てはまるのでしょうが、何か譲渡の特例があるか否かを教えてください。


A.被災市街地復興土地区画整理事業等のために土地等の譲渡を行った場合には、次のような譲渡所得の特別控除等の適用を受けられます。

1.被災市街地復興土地区画整理事業等に係る土地等の譲渡所得の特例
 (1)収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例又は収用交換等の場合の5,000万円特別控
 除
  次のア又はイに当てはまることとなった場合、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例又は収用交換等の場合の5,000万円特別控除の適用を受けられます。
  ア.地方公共団体等が特定被災市街地復興推進地域内で施行する被災市街地復興土地区画整理事業で減価補償金を交付すべきこととなるものの施行区域内にある土地等について、公共施設の整備改善に関する事業の用に供するために、これらの者等によって買い取られ、対価を取得する場合
  イ.地方公共団体等が特定住宅被災市町村の区域内で施行する都市再開発法に基づく第二種市街地再開発事業の施行区域内にある土地等について、その事業の用に供するために、これらの者等によって買い取られ、対価を取得する場合
 
 (2)特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の2,000万円特別控除
  特定住宅被災市町村の区域内にある土地等が、平成23年12月14日から平成28年3月31日
までに、地方公共団体等によって買い取られる場合、特定土地区画整理事業等のために土地等を
譲渡した場合の2,000万円特別控除の適用を受けられます。

(3)特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500万円特別控除
 特定被災市街地復興推進地域内にある土地等が、次に掲げる場合に当てはまることとなった場
合、特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500万円特別控除の適用を受けられます。ただし、上記(2)の適用を受ける場合は、この特例の適用を受けることはできません。
 ア.建築物の建築等の不許可に伴う買取り申し出に係る土地が買い取られる場合
 イ.公営住宅等の用に供するための保留地が定められたことに伴って、換地処分によりその土地等のうちその保留地の対価の額に対応する部分の譲渡があった場合

(4)優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例
 土地開発公社に対して、所有期間5年超の次に掲げる土地等を譲渡した場合において、その譲
渡した土地等が独立行政法人都市再生機構が施行する次に掲げる事業の用に供されるものである
ときには、優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の軽減税率の特例(2,000万円以下
の部分について所得税10%、住民税4%)の適用を受けられます。
 ア.土地等:特定被災市街地復興推進地域内にある土地等
   事業:被災市街地復興土地区画整理事業
 イ.土地等:特定住宅被災市町村の区域内にある土地等
   事業:都市再開発法に基づく第二種市街地再開発事業

2.被災市街地復興土地区画整理事業による換地処分に伴い代替住宅等を取得した場合の譲渡所得の課税の特例
 特定被災市街地復興推進区域内にある土地等につき、被災市街地復興土地区画整理事業が施行された場合において、その土地等に係る換地処分により一定の代替住宅等を取得したときには、譲渡所得の課税上、その換地処分により譲渡を行った土地等の譲渡がなかったものとして、いわゆる取得価額の引継ぎにより課税の繰延べがなされます。

 これらの特例の適用を受けるには、確定申告書に、その特例の適用を受ける旨を記載し、各々の特例に応じて一定の書類の添付を行うことが必要です。

なお、平成25年1月1日から平成49年12月31日までは、復興財源確保法により、所得税のほか、復興特別所得税が課税されます。それゆえ、本問については、税率が所得税10%、復興特別所得税0.210%、住民税4%となります。
Q.今年3月に他界した父の財産を相続しましたが、その財産の大半は土地です。そのため、相続税の納税に当たって、不要な土地を売り、その売却代金を相続税の納税資金に充当したいとの考えを持っています。このような場合、土地の譲渡所得の金額を計算するに際し、相続税相当額が経費になると聞きましたが、その取り扱いについて教えてください。



A.相続又は遺贈(以下、相続等と呼びます)による財産の取得後、短期間のうちにその財産を譲渡した場合における相続税と所得税の税負担を調整するために設けられている規定が、相続税額の取得費加算の特例です。一定の条件に該当するなら、納めた相続税のうち一定の金額を譲渡所得の計算上、経費とすることができ、譲渡税を軽減することが可能です。

1.概要
 相続等で取得した財産を、一定期間内に譲渡すると、譲渡所得を計算するに際し、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に算入することができます。

2.適用要件
 次の要件に該当する場合、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に算入することができます。
・相続又は遺贈で財産を取得した者であること。
・その財産を相続した者に相続税が課税されていること。
・その財産を、相続のあった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。

3.取得費に加算する相続税額の計算
 譲渡資産の取得費に算入することができる一定の金額は、次の(1)及び(2)で計算した金額の合計額、又は(3)の金額のうち、低い方の金額ということになります。

 (1)土地等の譲渡をした場合
  土地等の譲渡をした者に課税された相続税額のうち、その者が相続等により取得した全ての土地等に課された額を取得費に算入することができます。
  この場合の土地等とは、土地及び土地の上に存する権利のことをいいます。また、相続時清算課税の適用を受けて相続財産に合算された贈与財産である土地等や、相続開始前3年以内に贈与で被相続人から取得した土地等は、この場合の土地等に該当します。一方、相続開始時において棚卸資産又は準棚卸資産であった土地等や、物納した土地等、物納申請中の土地等は、該当しません。
取得費に算入する相続税の額の算式は、次の通りです。
 その者の確定相続税額× その者が相続等で取得した全ての土地等の相続税評価額の合計額/(その者の相続税の課税価格+その者の債務控除額)
 ただし、この特例の適用を受けて取得費に算入した相続税額が既に存在するのであれば、その金額を控除した額ということになります。

 (2)土地等以外の財産(建物・株式等)の譲渡をした場合
  土地等以外の建物・株式等の譲渡をした者に課税された相続税額のうち、譲渡した建物・株式等に課された額を取得費に算入することができます。
取得費に算入する相続税の額の算式は、次の通りです。
 その者の確定相続税額× その者が譲渡をした財産の相続税評価額の合計額/(その者の相続税の課税価格+その者の債務控除額)

 (3)この特例を適用することなく計算した譲渡所得の金額

4.特例の適用手続き
 次の書類を添えて確定申告書を提出することにより、この特例の適用を受けることができます。
・相続税の申告書の写し
・相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書
・譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書【土地・建物用】や株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書)