文学と映画 -2ページ目

映画12夜 1997年英国トレバー・ナン監督 ヘレナ・ボトム・カーター、 イモジェン・スタッブス

本当に、この作品は、とても明るく楽しい映画です。 風景はちょっと落ち着きすぎていますが。 寒いそうな英国の海岸地帯の風景が、ちょこちょこ出てくるせいかもしれません。 でも映画の中で、太陽の光が当ると、とても和やかな風景に変化します。



ヒロインのヴァイオラ嬢は、詩的な言葉や、洗練された音楽の演奏を連発して、周囲の人たちにとても愛されていく。 そして、女性であることを周囲にばれないよう、努力するのですが、 それがなかなか、大変なのです。



それに比べ、双子の兄貴セバスチャンの方は、姿形は妹に瓜二つに似ている。でもとても喧嘩が早い。

戯曲の物語の設定は、当然17世紀。イタリアという。 この時代の知識人は、イタリアの明るい風土に憧れていたのか。 でも、物語はイリリアという架空の国。 (一文字違いで、イタリアになる。)



映画の舞台は、19世紀の英国の地方の貴族の荘園という感じを受けました。 風景も少し寒々としているところから、イタリア・ロケではないと思います。



このシェイクスピアの大作品と、著名なシェイクスピア俳優たちがつくった映画に、これ以上何もいうことはありません。 本当を言うと、この作品へのレビューを書く予定で、2ヶ月無為に過ごしました。 とても奥深いので、だから、作品と読書の印象すら満足ではないのです。


注。 私の一番すきな映画の1つです。


映画12夜 1997年英国 トレバー・ナン監督 ヘレナ・ボトム・カーター、 イモジェン・スタッブス、 ベン・キングスレィ、他


トレバー・ナン監督 ヘレナ・ボトム・カーター、 イモジェン・スタッブス、 ベン・キングスレィ、他

追伸


主演女優の一人 イモジェン・スタッブスは、監督の奥様。 とても年が離れているのでしょう。 女性の男装というのは、とても凛々しいと思いました。


トレバー・ナン監督 は大ヒットミュージカル「キャッツ」の製作にも。

十二夜 シェイクスピア 続き

物語は明るく楽しいストーリーです。でも、この映画の出だしは、嵐の夜、帆船の海難事故から始まります。船の中では、嵐への恐怖に抗うような、楽しいパーティーが開かれているのですが・・・。


俳優たち、監督も元々シェイクスピアの劇にとても精通していて、明るくコミカルなところにも、とても奥深い演技が冴えていると思いました。



ヴァイオラ嬢が、オーシーノ公爵の使者となるくだり。


ヴァイオラ嬢は、オーシーノ公爵に恋をしているのです。なのに、皮肉なことに伯爵令嬢に、公爵の求婚を願い出る。 若い女性だから、若い女性に「恋の橋渡しは、とても気楽に出来ちゃうのですね」


そのへんの演技は、何度も見返しました。よくよく見れば、とてもその楽しげで簡単そうな演技の奥ゆかしさ、難しさ、それを私は感じてしまいました。



貴族的な言葉づかいをしていても、ちっとも違和感がないんです。 それどころか気品があふれている。 大体、普通の俳優さんたちが、貴族的な、または詩的なことばづかいをしたら、きっと暗いイメージの作品になってしまったと思います。

十二夜 シェイクスピア  映画 「十二夜」 監督トレバー・ナン

シェイクスピアの戯曲 「十二夜」にほぼ忠実に作られた映画作品

洒落たセリフにあふれています。 ところどころの台詞はとても詩的で。 さすがシェイクスピアという感じです。



二人の双生児が、間違われて、回りを大騒ぎさせるというくだりは、とても楽しい筋立てになっています。

20世紀ドイツの童話作家エーリッヒ・ケストナー作。



「二人のロッテ」



にも大きな影響を与えたのでは、と勝手に想像しています。

シェークスピアがこの作品を書いたのは、エリザベス女王が、外国の賓客を新年に迎えるための、演劇として作られたそうなので、そのあたりのエピソードは、もう1つの映画、「恋に落ちたシェークスピア」をご覧になっても良いでしょう。


恋に落ちたシェークスピア グィネス・パルトロウ、ベン・アフレック他

墨東綺譚 ぼくとうきたん    永井荷風原作、新藤兼人

荷風先生は、自分の家では疎外感を持っていた。兄からは勘当されている。そして、カフェ、遊郭、ミュージック劇場の女性と仲良く生活をエンジョイしているが、それはそれで適当なリスクが発生する。 60歳近くなって、荷風先生は、20代半ばの女性と恋仲に、その女性が「遊郭」の女性。 でも、その女性は素直で一途に、荷風先生との夫婦生活を夢見るのだが。



原作者も、映画監督も、そして演技者(津川雅彦、乙羽信子他の方々)も一流です。

新藤監督は、その時代を生きた方です。 とても良く、映画はその時代の雰囲気を伝えていると思います。

物語は、小説「墨東綺譚」というよりも、日記、断腸亭日乗が骨格になっています。 監督としては、永井荷風を主人公にしたかったということなのでしょう。 



またそれで、この映画は成功したといったら、おこがましいでしょうか。永井荷風の日記、断腸亭日乗は、大正7年正月七日から、ずっと戦後に至るまで書き綴られています。 この作品の中から、エピソードをたどって、脚本化したのですから、 その膨大な作業には敬意を表したい。
なんと言っても、私のような無学非才のものにとって、 断腸亭日乗は、古風な美文調のつづり方教科書のようなものですから。



また、監督の演出は、とても象徴的です。 例えば、主人公が二回バスで移動するシーンは、いずれも夜間。そのシーンがあるたびに、時代は厳しい方へ移動していく・・・。

物語の進行をたどるというより、物語の時代の雰囲気を楽しむ、そんな映画です。



映画 墨東綺譚   小説 墨東綺譚

墨東綺譚 ぼくとうきたん    永井荷風原作、新藤兼人

小説「墨東綺譚」の冒頭、永井荷風が、若い作家に誘われて浅草でフランス映画を見るが、 原作を読んだ方が面白いというように感想を漏らしたと、記述している。



映画より、原作の方が面白い、というのは、現在においても、文学好きの人の常識でしょうが。映画「墨東綺譚」に関して言えば、私には原作に劣らず、面白かったです。



墨東綺譚が永井荷風の代表作なら、映画の墨東綺譚は新藤監督の代表作のひとつではないでしょうか。

 60歳近い男が、20代半ばの女性と恋仲に、しかも、その女性が「遊郭」の女性。なんてあらすじを発表すれば、途端に、「・・・・・」と批判の嵐に会いそうです。



でも、この映画を何の私見も持たずにごらんになれば、以外に上品な感じの作品だという感想をもって頂けると、思います。 それは、これが、ある時代の、ある特殊な世界の文化を表現しているから、と言ったら、ひいき目過ぎるでしょうか。



映画 墨東綺譚   小説 墨東綺譚

落ちた偶像。 グリーン著

ロンドンの中心にあるフランス大使館の中で。 大使夫妻は帰国中。幼い大使の一人息子フィリップ。が大使館の中で一人暮らしている。執事夫妻が同居している。



執事の妻は残酷な女性。いつもフィルに厳しく接している。 執事と若いタイピストの恋。フィルと執事とその恋人の3人しか居ないはずの大使館のなかで。恐ろしい事故が起きる。 フィルは、ベインズが彼の妻を殺したと思い込んで、公邸を飛び出す。



フィルは恐怖のあまり深夜のロンドンの街に駆け出し、彷徨のすえ、警察に保護される。 警察では、大使館での事故死の報が。 そして、保護した子供が、フランス大使の子供と知って。 ベインズの不倫と、妻の不審な事故死。 これだけでも、夫に嫌疑がかかるのは自然ななりゆきです。 そして、目撃していただろう、フィルのあやふやな言動。 



フィルは、ベインズが殺したと思っている。 でも、妻は大事な蛇を殺したから憎い。 ベインズは大事な親友。 そして、まだ死というものの重大さが分かっていない幼さから、 むやみにかばおうとするのです。 警察の警部は、フィルから何かを聞きだそうとし、フィルは嘘を重ねる。 フィルが嘘をつけばつくほど、警部はしつこくフィルから聞きだそうとする。



ところが、ある事実が発見されてから、 今度はフィルは真実を話し出す。 そして、フィルが真実を話そうとすればするほど、誰もフィルの話に耳を貸そうとしない。 この対比がとても自然で、さすが、グレアム・グリーンということなのです。 細かく見ていけば、それぞれ複雑な物語の絡みであるが、 それがシンプルで、しかも納得できる展開に見えてしまうのである。


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小説 グレアム・グリーン全集 (11)

落ちた偶像

フランス大使の一人息子のささやかな冒険物語。
作者はグレアム・グリーン 他に「第三の男」など。
大使公邸に住む、フィリップ少年は、フランス大使の6歳の息子。
母親は、病気で故国に。父親は、その母親を迎えにフランスに帰国した。 ロンドンの公邸の中では、夜になると、執事のベインズとその冷たい妻の三人になる。

ここで、貴族社会での英国の執事とは、日本のお手伝いさんとは訳が違う。 結構重要な仕事である。 家政の取り仕切りや、賓客を招いてのレセプションなど、全てを任されている。


フィル(フィリップ)はベインズのことをとても尊敬して、いつもまとわりついていた。ベインズの方も、適当にあわせてくれる。 それに比べ、ベインズの妻の方は、フィルに冷たくあたり、フィルが可愛がっていた小さな蛇をみつけて、熱く焼けたストーブの蓋を開け、中に放り込んだりする。

日本人の感覚なら、フィルは主人の独り息子だから、執事の妻だって、フィルをちやほやしてもおかしくないのに、きびしく扱う。 まあ、だから、外国人の子はしつけが行き届くのだといえるのか。

フィルは外出したくてたまらないが、独りで外出を許される年齢ではない。 ベインズは外で彼女と密会するのが楽しみ。それで、仕方なくベインズはフィルを連れて、デートという形になる。 そのフィルがベインズの妻に、密会のことを口をすべらせたら困ると、内心冷や冷やしている。



そして、それは現実となる。
ベインズの妻は、ある日、数日外出すると夫にうそをつく。夫はこのときとばかり、大使公邸に彼女を連れてくる。
この彼女は、今で言うキャリア・ガールで大使館にタイピストとして雇われている。(この物語は50年くらいまえの話)

そして、この不倫相手の女性は、結構優しくてきちんとした人である。 また、ベインズの妻というのが、おそろしく冷たい女性。 夫の不倫を幼いフィルがかくしていたというので、フィルを怖い顔で脅したりするのである。


ロンドンの真ん中なのに、深夜の大使館は、不倫の二人と、幼いフィル。でも、もう一人の陰が・・・。



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