日本人作家の中でも

大好きな梨木果歩さんが

2020年7月10日にエッセイを出した。

 

 

2015年4月4日に

東京のジュンク堂書店池袋店で

講演されたものを今年、文字に起こしたものだった。

対象が若い人という事もあり

軟らかな言葉で、綴られた本だった。

 

『同調圧力』についてかなりの量を割いてお話を

そして、今、梨木さんがこの本を出した理由を

心の奥深く沈めて考えている。

 

★★★

特別印象に残った話があるので紹介する。

 

哲学者の鶴見俊輔さんから梨木さんが聞いた話だそうだ。

要約すると

「戦時中招集され軍隊に入った初年兵の訓練があった。

それは、スパイとして捕まり捕虜となっていた

中国人を木に括り付け、銃剣で一人一人ついていくもので、

生身の人間を殺すことで度胸を付ける訓練だと言われた。

 

初年兵Aは、『人殺しの仲間になりたくない』と考えた。

というよりも

尋常でないと理解できる話だが、

その場にいた初年兵たちは次々と刺していった。

 

Aの番になったが、中国人の前に行くと銃剣をおろし、

殴られようが、蹴飛ばされようが、実行できなかった。」

 

梨木さんは、続ける。

「Aが特別、英雄なわけではなく、自分で考え自分の魂に従って行動した」だけである。

 

自分の行動を決めるのは自分=自分こそが本当のリーダーである

どんな状況にあっても

自分の行動を決めるのは自分。

しかしながら

この自分を育てていくのも自分であり

自分の魂をどのように育てていくかが、いま、問われているのである。

 

 

ところで

同調圧力と言えば・・・

 

緊急事態宣言が解除されてからあまり聞かなくなったけれど

他県ナンバーの車両に嫌がらせとか

前を行く車のナンバープレートのそばに

「静岡県に住んでいます」とかシールが貼ってあるのを見ると

 

他県ナンバーに嫌がらせをする土地の人の感覚に

同じ土地に住むものとして がっかりした。

 

うちの近所でも 隣の家に従姉妹の他県ナンバーの車がやってきて

その家の庭でバーベキューを楽しんでいると、そこに一台のパトカーが。

やはり近所の人が、警察に連絡を入れたとのこと。

 

『自粛中にも関わらず、他県ナンバーがやってきて バーベキューをして騒いでいる』

パトカーが巡回にやってきて注意した・・・・

 

新型コロナの影響で自粛ありき、という考え方は分かる。

けれど

楽しみのすべてをやめろと言うのとは少し意味合いが違うように思え、残念に感じる。

 

ふと いろいろ考えたり 梨木さんの本を読んで

ある本を思い出した。

 

 

実は、この本は多分、今年の夏の課題図書になるに違いないと思っていた。

まあ、ならなかったんだけど。

 

 

人間は文字通り、人と人との間で暮らしていく。

人と関わりあって暮らす社会的な生き物だ。

最低限誰かの迷惑にならないように生きることは大切だ。

けれど、

だからと言って

他県ナンバーの車に嫌がらせをしたり

親戚が集まって行ったバーベキューを 警官に通報したり

それは本当に正義だろうか。

 

自分の中に

自分の行いに対する正義の価値基準を

しっかり持つことが必要であり

その価値基準を育むために

読書をしたり、社会情勢に対してアンテナを貼ったり

一方向からの情報を鵜呑みにしないために

 

あらゆる方向から

物事を見られる人になろうと

つくづく思った。