こんな興味深い実験があります。

あなたは前売りの舞台のチケットを2万円で手に入れました。大好きな舞台だったのでとても楽しみにしていたのに、劇場に到着すると、カバンに入れたはずのチケットがありません。カバンの隅々を探しても、あらゆるポケットを探しても、チケットは見つかりませんでした。2万円という大金を無駄にしたと思うと絶望的でした。

舞台の開演は間近です。あなたは、もう2万円払ってチケットを買い直しますか?それとも、諦めて帰りますか?




こう質問すると、約9割の人が、諦めて帰ることを選びました。では、次は、少し状況を変えて考えてみましょう。


今回、あなたは、前売りのチケットは買わずに、現金2万円を用意して、当日券を買うつもりでした。ところが、チケットの列にならんだところで、財布を確認すると、なぜか現金がありません。代わりにクレジットカードでチケットを買いますか?



この状況では、先の質問で帰ることを選んだ半数以上の人が、考えを変えて、買うと答えました。チケットのお金を二重に払うことは同じなのにも関わらず、なぜこういった感覚の違いが生まれるのでしょうか?


この現象は、リチャード・セイラーが唱えた「心の会計」と呼ばれる理論で説明ができます。

心の会計とは、私たちは無意識的に心でお金を色分けしているということです。


私たちは、お金が入ると、それぞれの目的や性格に応じて、心の財布に配分しています。例えば、日々の日用品は100円でも節約しているのに、お出かけ先のお洒落なカフェで、コーヒーに600円を出すことに惜しまないのは、日用品用の心の財布と、お出かけ用の心の財布が分けられているからです。


この心の財布は人によってそれぞれ配分が違いますが、服に大金をかけやすい人は、服を買う時に、服用の心の財布を開いています。それが高いか安いかの判断は、服用の財布の中での比較になるので、日用品用とは比較をしません。


これと同じ心理がボーナスにも使われているのです。ボーナスは、給料とは別の臨時収入という位置付けにある人がほとんどです。つまり、日々の生活のお金とは別の財布に分けられてしまうため、ブランドや高級と呼ばれる贅沢品を買うことに抵抗が少なくなります。宝くじやギャンブルなどで勝ったお金などは貯金できずに、派手に使いやすいのもこの心理が働くからです。


このように、私たちがが無駄使いや衝動買いをしやすい理由は、無意識のうちにお金を色分けしていて、それぞれ心の財布に分類していることにあります。



【心の財布に惑わされないための3つの方法】


①ボーナスは臨時収入として考えない

月収は、毎月うけとるお金ではなく、年収÷12ヶ月としてボーナスをならして考えるようにしましょう。そうすることによって、ボーナスで抵抗なく贅沢品を買うことを防ぐことができます。


②「旅行」用の心の財布には注意。

旅行の際は、非日常を感じるため、あまり考えずにお金を使いやすくなります。旅行先の飲食店での食べ物や飲み物は普通のお店よりも割高なのにも関わらず、その金額を喜んで払うことが多いです。その効果を狙って、大抵の観光地ではものの価格が釣り上げられています。旅行中に、お金を使い過ぎかなと感じたら、自分の普段の生活の当てはめて、価格が許容範囲か考えましょう。


③自分のどの心の財布が大きくなってしまっているかを意識する。

服や化粧品などにお金をかけやすい人は、無意識のうちにその心の財布が大きくなりすぎている可能性があります。そのお財布の中では安いと感じても、全体のお財布で考えると割高だと思い直すこともあります。大きくなってしまっている財布に気づいて、自分で上限を設定するなど工夫してみるといでしょう。



心のお財布は、私たちにとって必要な一面もあります。心の財布を持つことで、買い物の判断がとっさにできるようになり、それぞれの状況でどこまでなら出せるかも判断できるようになります。このおかげで出費を自制しやすくもなります。しかし、その反面で、大きくなってしまった心の財布には注意が必要です。無駄遣いや浪費をしやすいなと感じる人は、自分の心の財布に注意をむけてみましょう。