感動の名作シリーズ
ここは、チェコの片田舎。寒い寒い12月の事です。その夜は、大雨と強風と大雪と砂が混じった最悪の天気でした。
ガリガリに痩せたピンク色の子犬のコロチンは、細い路地を震えながら半泣きでびしょびしょでゆっくりと脇腹を押さえながら歩いていた。
「おなかがすいたよぉ…。温かクリームシチューとまでは言いません。せめてお湯を飲みたい。お湯を!」
ああ、かわいそうなコロチン。
すると、一人の少年が震えながら半泣きでびしょびしょでゆっくりと脇腹を押さえながら歩いておりました。
「おや、見るからにかわいそうなピンク色の子犬がいるよ。君、こんなところで何してるの?」
「コロチンには家も、お金も、食べ物もありません。毛もほとんど抜けてしまいました」
ああ、かわいそうなコロチン。
「それはかわいそうに…。これあげるよ!さっき喫茶店で分けてもらったんだ!」
少年はポケットからガムシロップを取り出し、コロチンの目の前に叩きつけました。
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
コロチンはあっという間に平らげました。
「よっぽどお腹が空いていたんだね、よかった。うちに泊めてあげたいけど、生憎、お母さんが犬アレルギーなんだ。」
すると、コロチンは言いました。
「泊めてもらうだなんてとんでもない。それより、ガムシロップをいただいたお礼にあなたのうちの番犬をさせてください。門の前に寝ずに座っております」
少年はコロチンを家に案内しました。
やがてたどり着いたのは、汚れて腐って壊れかかった小さな小さな紙でできた家でした。
ああ、かわいそうな少年。
「番をよろしくね、コロチン」
少年は家に入っていきました。
コロチンが門の前に座っていると、中から少年と母親の会話が聞こえてきました。
「すまないねぇ、私の体がこんなだから、お前に手料理の一つも作ってやれやしない…」
ああ、かわいそうな母親。と少年。
「何言ってんだい!おいらへっちゃらさ!新聞の活字拾いの仕事だって、すっごい楽しいんだ!それより、もらってきたガムシロップをお飲みよ。」
「ありがとうねぇ…。おや、お前の分はどうしたね?二つ貰っておいでと言った筈だよ?」
「僕の分は……さっき、飲んじゃったんだいっ!」
それを聞いたコロチンは居ても立ってもいられなくなり、家の中に入って行きました。
「コロチン!家の中は外よりは暖かいし、僕も入れてあげたいけど、母さんが犬アレルギーなんだ!焚火にあててやるわけにはいかないんだ!」
「だいじょうぶ。その犬アレルギーの原因なら、もうすぐ…焼肉になりますから…。しかもガムシロ入りのね!」
かわいそうなコロチン。さようならコロチン。ありがとうコロチン。君の事は一生忘れないよ。
少年と母親は、焼いたコロチンを貪り食いました。
やがて、雪がやみ朝の光に照らされた此方の空はピンク色に染まり、まるでコロチンが笑っているように見えました。
「コロチン、やっと誰かの役に立てた…」
「コロチン、みんなの事忘れないよ…」
「ホタル、なんで死んでしもた?」
「メーテルーーーー!!!!」
今でも、この家のあった場所にはコロチン地蔵が、あるとか、ないとか。
あっても、首だけ、ないとか。

